金属バットを振り回す【FGO】 (ページ1)

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路地裏でぺっと彼女は血を吐き出した

口元を手の甲で拭ったが汚れが広がっただけだった

「こんなところで一体何をやっているんだい？」

名探偵殿が人の良さそうな笑みで彼女に聞いた

彼女はとても嫌そうな顔をした
なぜ嫌悪感を抱くのかもわからなかったが嫌な感じがしたのだ

「けんか」
「へえそうかい」
「はやく帰れよ」
「ここら辺で呼ばれた気がしたんだ」
「そうかい、まあ私じゃないや」

名探偵殿は笑みを崩さないが彼女は威圧感を感じた

しょうがない、と一つ溜息をついて

「確かに私が喧嘩した奴が助けてって言ったけど、HELP(助けて)って名前の奴を呼んだんじゃないんだよ。すまんね、ヘルプさん」
「残念ながら私の名前はHELP(助けて)ではないんだ。すまないお嬢さん」
「じゃあ思い当たらないな、あんたが間違っていること以外考えられない」
「これも残念だがお嬢さん、君が私を呼んだみたいだ」

は？とより眉間にしわを寄せ

「私はそんな弱い奴じゃない。喧嘩は一対一でやるもんだ」
「只の喧嘩に呼ばれた訳じゃない。聖杯をかけた世界の喧嘩に巻き込まれたのさ、私達は」

せいはい？と彼女は何度も頭の中で繰り返したが意味が分からなかった

「何？それ」
「言っただろう？世界の喧嘩さ、願いを叶えたいっていう奴らが集まる喧嘩さ」
「なんでそんなのに私が？」
「足元を見たら分からないか？」

サッと視線を下に移してみると先程の奴のようなやつらが描きそうな落書きがあった

「落書きがあるだけだろ？」
「まあそんなところだ。それに君の血が付いている。これで完璧だ」
「意味わかんないんだけど」
「要するに魔法陣ってやつだ。ほら、聞いたことないか？」

「お前私のこと馬鹿にしてるんだろ？」
「まあ、間違っちゃいないけど」
「お前みたいなひょろいやつくらいどうとでもできるぞ？」

何故喧嘩を売られているのだろうと考え、言葉足らずなことに気づいた

「あ、そういう意味じゃない。すぐ武力に訴えることを馬鹿にしているんだ」

がしかし遅かった
彼女は殴ってきた
しかも顔面を狙っている

こういうのは性に合わないと思いながらも名探偵殿は拳を受け止めた

「驚いた、君は意外と力があるんだね」
「一回止めた位で調子にのるなよ」

しかし2回、3回、それ以上打っても当たらなかった

「紳士は女性に手を出せないんだ」
「殊勝な心がけですな」
「いやはやそれほどでも」

当たらないと分かったところで彼女は手を止めた