すきなのに (ページ5)

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4話ページ5

――――――

『あのさ今どこにいる？』

『予約してたホテルにいます』

突然聞かれた居場所から

なぜ私は猛ダッシュで今日の午前中に行った会場に向かっているのだろう。

息が上がる。

息を整えながら待ち合わせの場所に行くもののまだ誰も来ていない様子。
走ってきたのがちょっと馬鹿みたいだったかなって思う。

秋に近づく風がなぜか少し寂しくも感じさせる。

『見っけ!!!』

ぐいんと腕が引っ張られて振り返ると

真っ黒のサングラスをかけてパーカのフードをかぶったテヒョンくんがいた。

『ごめんなさい…わざわざ忘れ物届けてくれるなんて』

『いーよいーよ気にしないで!!!』

へへへと人懐っこく笑うテヒョンくん。
でも彼から私の目的の忘れ物は渡されなかった。

『あの、忘れ物渡してもらっていいかな？』

いつまで経っても話すばかりでしびれを切らしてこんなこと言ったけど私やっぱり図々しいやつかな。

こんな有名な人があってくれるほど幸せなことはないのにやっぱり変な人なのかも……

『忘れ物なんてないよただ僕が会いたかっただけ』

ニコッと月明かりに照らされ顔が私の胸を何故か高鳴らせる。

『嘘ついてごめんねは言わないかな』

その一言にまた私は瞬きを早くしてしまう。

『だって僕にあえて嬉しそうな顔してるから。でしょ？Aちゃん？』

冷たい冷えきった手が私の頬に触れる

『ねぇ、だめ？』

ツンっと私の唇に彼の指が触れる。

大きな目がキラキラ光って私をじっと見つめてる。

君のファンの子にそんな聞き方されたらドキドキが止まらないでしょう！？

なんて内心大慌てなのに声に出すことは出来ず

『何も言わないの？』

私の上着のフードを彼が私に被せた瞬間。

前から差し込む月明かりが

数秒途絶えた。