第3話 赤い瞳の男 ページ4
その男はわたしに手を伸ばすと、目元の涙を拭った。
固まっていたわたしの体が、反射的に仰け反る。
冷や汗が額を伝った。
「君のような可愛らしいお嬢さんが、夜道を出歩くものではありませんよ。それも一人で」
男は小首を傾げて、わたしの視線に合うように腰を屈めた。じっと見据える赤い瞳に、目が離せなくなる。
「……な、なんでも…ないんです。少し、夜道を散歩していただけで……」
思わず声が震える。瞬きの回数が多くなる。制服のスカートを力強く握りしめた。
男は目を細めて、わたしの肩に手を置いた。ビクッと体が震える。
あからさまな態度を取りすぎたせいで、気づかれたかもしれない。
わたしが、この男を"人間ではない"と思っていることに。
すると男は案の定、
「お前、わたしの正体に気づいているな？」
ニヤリと口を歪ませた男。
サーっと血の気が引いたのを感じた。
ですよねっ！ バレますよね！？ あんなに震えてたら！
「小娘、何故分かった？ わたしはごく一般の人間と変わらない姿のはず……どのようにして見破った？」
「な、なんのことでしょう……？」
「惚けるな。わたしの質問に答えろ」
何となくだよ！何となく！ わたしの危機管理能力が警報を鳴らしてるんだよ！！
でもそんなこと言ったら殺されそう！
わたしがどうしたらいいか分からずに口を噤んでいると、男は突然わたしの首を掴んで持ち上げた。
片手で首を締めあげられる。
はぁっ！？ 何コイツ、突然何すんの！？
「質問に答えないなら、もう用済みだ」
用済みって、殺すってことっ？ 嘘でしょ！？
「…あ゛ッ、離せッ！ ぁがッ」
「ほう。威勢がいいな」
足をばたつかせて必死に抵抗する。男の手を掴んで引き剥がそうとするけどビクともしない。
締めつけがさらに強くなって、意識が朦朧としてきた。
く、苦しいッ。誰か、助けて……！
すると突然、男がわたしの首から手を離した。
ドスンと地面に落ちる。
「ゲホッ、ゲホッケホ」
急に入ってきた酸素に激しくむせた。喉元に手をやりながら、恐らく涙目であろうわたしは男を睨みつけた。
なんで手を離したの？ まさか気が変わった？
男は面白そうに微笑むと、懐から刃物を取り出して自分の右手を傷つけた。
「はっ？ アンタ何してんの！？」
右手から大量の血を滴らせながら、ゆっくりと、わたしに近寄ってきた。
座り混んだまま後ずさる。だけど直ぐに壁にぶつかって、わたしの逃げ道はなくなった。
第4話 一夜の変貌→←第2話 タイムスリップって嘘過ぎない？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 6人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夕霧 | 作成日時：2019年8月23日 14時
