第2話 タイムスリップって嘘過ぎない? ページ3
「ん……」
ザワザワと賑わう音に目を覚ます。
あれ? わたし倒れてる? なんで?
そう思って体を起こした。
倒れていた場所は何故か地面。それもどこか知らない路地裏の。
辺りには空き瓶や靴跡がついた広告紙が散乱している。
薄暗い路地裏の先には、うっすらと明かりが見えた。大勢の人の声もする。
なんでこんな場所にいるのかは分からないけど、早く出なくちゃ!
明かりに導かれるように駆ける。
ようやく路地裏を抜けると、わたしはその街並みを見て目を見開いた。
着物を着た男女たち。
様々な色の提灯で彩られた大通り。
見たことの無い古めかしい建物。
ここはわたしの知ってる場所じゃない。
それは明らかに分かった。
現代でこんな街並みを、見たことがなかった。
思わず後ずさる。
かさっ、と何かを踏んだ。手に取るとそれは、なんの変哲もない新聞だった。ただ一つだけおかしな点が……。
「年号が、大正……?」
おかしい。だってわたしがいたのは令和なのに!
どうして大正時代なの!?
これってまさか、まさか…あれなの?
漫画とかでよくある、タイムスリップってやつ??
そんなことある!? 嘘過ぎない!?
とてつもなく目眩がする。
わたし、これからどうすればいいの?
っていうか、どうやって大正時代に来たんだっけ?
よく思い出せない。
わたしは混乱して、ひとまず路地裏に引き返した。
暗い道をとぼとぼ歩く。
「はぁ。どうしよう……」
もしかしたら夢だったりするんじゃないか、そう思って頬をつねってみる。痛い。夢じゃない。
さらにため息が出る。
適当に道を歩いていたら路地を抜けた。だけど、さっきみたいに賑やかな場所ではなくて、そこには林が広がっていた。
林の根元に腰を下ろす。
真っ暗な夜空に一際大きな満月が輝いていた。
「わたしのいた時代より、ずっと大きくて綺麗に見える……」
月がぼんやりと歪んだ。あれっと思って瞬きをすると、頬に熱い雫が流れた。
わたし、泣いてる……。
その時、ガサッと後ろから音が聞こえた。
ビックリして立ち上がり、振り向く。
そこには、
「ああ、すまない。驚かせてしまったかな…?」
黒いスーツを身にまとった男。
夜空のような漆黒の髪に、帽子から除く赤い目。
背筋が凍った。
何故だかは分からないけど、怖いと思った。
恐怖で声が出ない。
男は、ニッコリと微笑んだ。
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作者名:夕霧 | 作成日時:2019年8月23日 14時