【rtrt】不安症の彼２

７１。 ページ37

. キヨside .




「あ、キヨさん監督のところ挨拶いってきた？帰る前にいってきなさい！」



「あ、そっか。了解っす！」



それまで席を離れず飲んでいた俺は、打ち上げの華々しさに少しだけ気後れしていた。

いつもより話し込める知り合いが少ないせいではあるけど。


そういえば、さっき監督たちのテーブルに挨拶に行ったヒラマチも全然戻ってこないな。


なんとなく自分のグラスを持っていったら駐在させられる気がして、スマホだけ手に持ち奥のテーブルに向かう。



「おお！？いいぞー！！」



「うわ、ちょっと…！これはどこに金を払えば…」



なにやら人だかりができている。視線が集まる先を見ると、酔っ払いのAさんと嫌そうに彼女を引き剥がそうとするヒラマチの姿があった。



「なんでですかあ…！私とじゃ嫌なんですか！キヨくんならいいのに！」



「何言って…！当たり前でしょっ！離してっ」



なにやってんだ、これ…


ただ戯れてるだけかと思いきや、Aさんの力が強いようでヒラマチは抵抗し切れていない様子。


そんな彼女たちに目を離せなくなっている大人たちは何かを見出しているようで、少し怖い目つきだった。


ちょっとどころじゃない、かなりヤバい目つき。


Aさんが押し倒すようにヒラマチに覆い被さり、テーブルの下に消えそうになったのを俺は力付くで阻止する。



「ちょっと！何してんの！はい、終わり！見せ物じゃないですよーみなさん！」



オーディエンスはそこに石があったら絶対俺にぶつけてただろと思うくらいの勢い。居酒屋の床がフローリングであることに感謝したのは初めてだ。


ヒラマチに大丈夫かと聞くと、彼女は色っぽい顔のまま、すぐに席を離れてしまった。

本当に大丈夫か…？



「あれえ、ヒラマチはあ？なんでキヨくんがいるの〜…私のヒラマチ…まだちゅうしてない…！」



いつの間にこんなに飲んでたのか、酔っ払いが完成されている。しかも相当面倒くさい。



「あの…俺先帰ります。この人もうダメなんで」



適当に挨拶を済ませて、呼んでもらったタクシーに乗り込む。


アルコールに強いイメージだったAさんも、疲れていたからなのか相当弱くなっている。

車に揺られて吐いてしまわないか心配だったけど、彼女はすっかり眠ってしまっていた。



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