【rtrt】不安症の彼２

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「それでは、撮影おつかれさまでした！乾杯〜！」



今日は待ちに待った打ち上げ。すべての撮影が無事に終わり、スタッフ全員が貸切の居酒屋にお弁当のように詰め込まれている。


私は名越さんや作家さんが集うテーブルに混ざって、業界人の顔になりきるのに必死だった。



「そういえば！あの監督の最新作見ました？」



「俺はもっと世界の終末みたいなものがとりたくてさ」



さすが現役のプロたちなだけあって、映像の話ばかり。私はほとんど聞き役でいながら楽しくお酒を飲んでいた。



「Aさんはこの仕事はじめてじゃないでしょ？」



「え、わかる！貫禄ありましたよね」



「えっ！初めてですよ〜…普段は動画編集しかしてないですし」



「ほんとですかあ？センスありますよ！」



お酒が入っているのもあって、気分がいい。褒められて上機嫌になっている私はいつもよりペースを速めて飲んでしまった。


隣に座っていたスタッフさんが席を立ったと思ったら、その後すぐに甘い香水の香りが広がる。



「Aさん！隣、いいですか？」



「わ！平田さんだあ！どうぞー」



頬をかわいらしくピンク色に染めて、くるんとまるく持ち上げられたまつげまで愛らしい。

私は助けてもらったあの日から彼女の大ファンになっていた。



「どうも！あの、Aさんってキヨさんと仲良いですよね！プライベートでも」



「え？まあ、そうかなあ…」



「何か聞いてません？私とのキスシーン、どうしてもできないって断った理由」



そういえば、そんなこともあったなあなんて必死に思考を動かす。

キヨくんの要望通り台本からキスシーンは消えて、私は忙しさからそんな出来事覚えてもいなかった。



「たしかファンのためって言ってましたけど〜…でも、よく考えたらおかしいですね！？だってヒラマチとちゅうできるんですよ？えっ、なんで断ったんだろう〜…私なら迷わずヒラマチとちゅうするのに！」



「えっ…？ちょ、ちょっと！」



「キヨくんの代わりに、私がします！」




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