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ようやく落ち着いて通常業務に戻れる、と思ったのに、事務所の雰囲気は大きく変わっていた。
その要因は新人の榊さん。
「榊さん、聞いてよー」
「榊ちゃん今日俺と飯いくべ」
彼が引き抜かれてこっちに来てから2週間も経っていないはず。
それなのに、もうみんなと仲良くなってる。
私は特段に仲がいい人すらいないのに、彼は男女問わずみんなに好かれている。
内藤さん曰くかわいい弟、って感じらしい。
コミュ力の差にコンプレックスを刺激されてしまう…そんなことを考えていても今更みんなと仲良くなれるわけじゃない。切り替えて仕事しなきゃ。
溜まっていた仕事を片付けていたら、陽が沈みかけていた。
「もう少しできるかな…」
休憩を挟んでデスクに戻ると、部屋には誰もいなかった。みんな帰ってしまったらしい。
「やっぱり、1人の方が気楽だよね」
なんて精一杯の強がりを誰に見せるわけでもなく、ぽつりと呟く。
よし、と気合を入れてパソコンと向き合うと扉がゆっくりと開いた。榊さんだった。
「あれ、Aさんまだ残ってたんすか?」
「あ、うん。忘れ物?」
「そっす。あ、あった〜バイクの鍵。焦った〜」
その時、タイミングよくスマホの通知音が鳴る。レトくんからだ。
レトルト迎えに行こうか?
「Aさん、ほんとに仕事熱心なんすね。みんな褒めてましたよ」
Aもう少しかかりそうだから大丈夫だよ。
「ああ、うん…あ、ごめん。聞いてなかっ…た」
LINEを返すのに集中して、彼の話も、彼がすぐ隣に来ていたことにも気付かなかった。
「彼氏さんですか?」
「え…っと…まあ…」
名前、見られてないよね?冷や汗が出そうになる。
「俺がここ来る前何の仕事してたかって、誰かに聞きました?」
「え?いや、何も…」
「実はアダルトビデオの編集マンだったんすよ。ウケますよね、全然ジャンル違うじゃんって」
「あー…そうなんですね」
彼は隣のデスクに軽く腰掛けて、長い足を手持ち無沙汰に組み直していた。少しだけ、嫌な予感がする。
「こういうシチュエーションの動画も何百本も編集したな〜って、なんか今思い出しちゃって」
「こういう…?」
「ほら、誰もいない社内で、みたいなの。あ、Aさんはそういうの縁ないっすかね?」
「いや、あの「興味あったりします?」
ど、どうしよう。なんだ、この状況。
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れ - 更新待ってます> < (12月10日 0時) (レス) @page12 id: 4dd8741af5 (このIDを非表示/違反報告)
ち(プロフ) - ストーリー最高です…続き見たいです… (2023年1月18日 4時) (レス) id: d4b54274d8 (このIDを非表示/違反報告)
しょ - いつも更新楽しみにしてます!続きが気になる〜〜 (2021年11月15日 21時) (レス) @page8 id: 28681cdda9 (このIDを非表示/違反報告)
蜜柑 - ヤンデレトさん…続き見たい…… (2021年11月8日 1時) (レス) @page7 id: 2c794b2e82 (このIDを非表示/違反報告)
ふぇりぺ2せい - 更新待ってました、、!!いっつもドキドキしながら見てます♡胸きゅんをありがとうございます (2021年9月26日 23時) (レス) @page6 id: b8164da90d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴより | 作成日時:2021年9月8日 16時