裏切っとらん ページ5
男がトントンやグルッぺンに勢いよく話している中、本から目をはなさいオスマンがポツリと独り言をこぼした。
外にいるグルッぺンたちには聞こえないが、正面に座るゾムはそれをしっかりと聞き取った。
os｢嘘やな、彼は裏切っとらん｣
zm｢はぇー…、なんでなん？｣
ゾムはオスマンの言葉に返答したが、オスマンは本から目を離さなかった。
しかしページをめくることは無く、同じページの同じ場所から目を動かそうとしなかった。
不意に瞬く瞼はオスマンが生きていることを伝えていた。
os｢…なんでアイツが外に出てこれたと思う？
アイツは牢に入らされたはずや｣
zm｢抜け出してきたんやない？｣
違う、と言う風にオスマンは首を横に振った。
牢屋から出ることは、常識として結構厳しい。
罪人をそう易々と外の世界へ放つわけにはいかないためである。
一般的に牢屋は地下に整備してあるので、罪人たちは外の世界の様子が分からず、朝か夜かさえも知る術は全く無い。
しかも、仮に抜け出せたとして地上に向かう階段を上る途中に配備された警備員に見つかって、また牢屋へ送り込まれるだろう。
となれば、男がそこから這い上がれるような協力者がいたことは確実である。
その協力者は彼だ。
彼は男を牢屋に入れる途中で故意に逃がしたのだろう。
zm｢じゃあ、なんで裏切られるような真似をすんねん。
仲間ならわざわざ敵になるような行動をしなくたってええやろ｣
os｢そこがなぁあ〜〜〜｣
オブジェクト化していた本をとうとう閉じて、わかりやすい落ち込む。
そこが分かっていれば彼に勝てる気もするのだが、どうもしっくり来る考えが浮かばない。
騎士の忠誠を第一に掲げること、
少しの間だが革命軍に在籍していたこと、
でも他国への移籍は絶対に拒否すること、
そのどれもが彼の本当の姿を隠していて、それでいて彼の真実なのである。
どこまでが演技か考えるにしても目的が割り出せな以上、ピタリとハマるものは無い。
うーん、と悩むオスマンを見るのはなかなか珍しい。
真剣に考えるオスマンをゾムは笑わないように見ながら、そこまで考えることが以前あったかと思い出していた。
グルッぺンに食べられたくないスイーツを隠すときでさえ、こんなに悩んだことは無かったのではないだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 205人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あかまる(プロフ) - まおさん» ご報告ありがとうございます。気づくのが遅くなって申し訳ないです。 (3月1日 0時) (
レス) id: b37e4ba748 (このIDを非表示/違反報告)
まお - オ.リ.フ.ラ.立ってますよ。ルール違反になってしまうので外したほうが良いと思います。 (2月23日 3時) (レス) id: aa7b758126 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あかまる | 作成日時：2024年2月20日 13時
