此奴らはもう助からへん ページ29
銃声が響いた。
彼が撃たれたということは、嫌でも理解した。
痛みに耐える彼を横目に、自分の油断が招いたことだと反省しつつ、攻撃した敵に怒りが湧いた。
身体は温まっていた。
気がついたら、彼を撃った敵は血を流して息を引き取っていた。
油断した、というのも原因だが、火薬の匂いがしなかったことから銃を持っているとは思わなかったのだ。
zm｢すまん、腕、痛むやろ？｣
｢このくらい大丈夫です。それより、ゾム様。
もしかして、鼻詰まってます？｣
鼻が詰まってるかと聞かれて、しんぺい神に言われたことを思い出した。
匂いに敏感な自分が、何故臭い仕事を請け負ったのか忘れてしまっていたのだ。
｢早く火をつけましょう｣
ゾムの返答が無いことを答えとし、彼は腕を手で抑えながら立ち上がった。
赤く滲んだ衣類では吸収力が無く、ぽたりぽたりと血溜まりを作っていた。
温室への扉を開くと、そこには地獄絵図が広がっていた。
なぜ人体実験をされた子供たちが麻薬に依存していないと思っていたのだろうか。
五、六人ほどの子供たちはプランターに育てられていた植物に噛み跡をつけていた。
中には葉を引きちぎったような形跡もあった。
｢やめろ！それを食べてはいけないっ！！｣
彼は咄嗟に子供たちを麻薬から遠ざけようとしたが、自我を失っている子供たちは酷く抵抗した。
手の甲に小さい引っ掻き傷がいくつも付いてしまっても、彼は諦めなかった。
だが、もちろん限界もあった。
ゾムは小さな箱をポケットから取り出した。
頭薬が付着している小さな棒を箱の側面へ滑らせ、小さな火が着けた。
彼はゾムが、子供たちを火の海に入れるのだと悟った。
｢今すぐ、それを消してください！
子供たちがまだ脱出出来ていません！｣
zm｢あんな、残酷なこと言うようで悪いけど、此奴らはもう助からへん｣
ゾムは貧民街、所謂スラム街の出身である。
狭い路地、骨が見えるほどやせ細った人間が食べ物と仕事に飢えている。
この中には処刑から逃げてきた極悪犯罪者や貴族らと不倫して身ごもってしまい逃げてきた人、地主だったが落ちぶれた人も含まれる。
そして、一度この路地に身を隠した者は国から逃れられると同時に、二度と上の世界へ上がることはできない。
一生では無い。その子供も、その子供も光を見ることは出来ない。
それらが当たり前の世界で、ゾムはなんとか情報ギルドへ就職した。
もちろん適当な価格の給料が支払われたことは無かったが。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 205人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あかまる(プロフ) - まおさん» ご報告ありがとうございます。気づくのが遅くなって申し訳ないです。 (3月1日 0時) (
レス) id: b37e4ba748 (このIDを非表示/違反報告)
まお - オ.リ.フ.ラ.立ってますよ。ルール違反になってしまうので外したほうが良いと思います。 (2月23日 3時) (レス) id: aa7b758126 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あかまる | 作成日時：2024年2月20日 13時
