責めることはできない ページ10
ｱｽﾞｰﾙ｢貴重な時間を浪費してしまいました。｣
アズールは電話が切れたスマホをスミスに返した。
Aがスミスを心配しているだろうと思い、無事を伝えるつもりで慈悲をかけたのだが、結果として失敗だった。
もし、次があるならば、どんな状況に置かれていても迷うことなく居留守を使うだろう。
アズールはスミスたちの冷えた身体を見た。
一般人たちの彼らには、この環境は命の危険を伴うだろう。
なんとか、ここから脱出する方法を思いつかなければならない。
ｼﾞｪｲﾄﾞ｢箒も絨毯もありませんし、飛んでいくことはできません。どう致しましょうか。｣
ﾌﾛｲﾄﾞ｢だるいけど、歩いて帰るしかなくね？｣
いつもより声色の低いフロイドには違和感しかないため、
アズールは、契約書を破ってその声を元に戻した。
案外、フロイドは楽しかったようだが、他の人たちはそうでもなかったようだ。
う、うぅ……っ。
か細く涙ぐむ声が聞こえた。
スミスは、その声の主が自身の親友であることに誰よりも早く気がついた。
ｽﾐｽ｢か、カリムくん……。だ、大丈夫ですか？｣
スミスがその身を案じるが、彼は深く傷ついているようだった。
カリムの痛々しい自責の念を聞く度に、息がしづらくなっていく。
他人の気持ちを理解出来るスミスだからこそ、本人と近い気持ちが心へと流れ込んできてしまうのだ。
スミスは『大丈夫』という曖昧な言葉をカリムの状態に当てはめることはできなかった。
スミスから見れば、カリムは大丈夫ではなかったのだ。
ｶﾘﾑ｢…ジャミルは、本当はあんなことするようなやつじゃない！
いつもオレを助けてくれて、頼りになるいいヤツで……ッ｣
ひしひしとその言葉の重みが伝わる。
もし、もしも、の場合だが、尊敬する我らが船長が裏切ってしまったら、私はかの御方を責められない、と思ってしまったのだ。
いつも我ら寮生を導いてくれ頼もしい存在が、なにか重いものを抱え込みその役目を放棄してしまったら。
"本当はこんなことするような人間では無い"
なにか理由があったのではないか。
そして、その理由は自分のせいなのでは無いのか…？
寮生のギスギスもまだ解消できていない。
船長は独断の考えで『何か』をこなしている。
我ら寮生には秘密にして。
どうか、船長が役目を捨てて逃げてしまうほどにまで、壊れませんように。
スミスの願いは1枚の
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作者名：あかまる | 作成日時：2022年11月6日 14時
