後輩が心配だから ページ9
ツーツーと音を残したスマホを耳から外す。
あのタコ図りやがったな、と歯を力強く噛み締める。
普段より乱雑な手つきで、両手にある土産の詰まった紙袋をトランクに詰め込んだ。
ｹｲﾄ｢…えっ？なになに？……どうかした？｣
隣でマジカメを弄っていたケイトが、電話を終えたAに声をかける。
突発的な行動だっため驚かせてしまったようだ。
｢あぁ。……予定より早いが先に学校へ戻ることにした。｣
黒の革手袋をはめ直し、少し重くなったトランクを持ち上げた。
ふんわりと上品な薔薇の匂いが漂っている気がした。
Aとケイトを避ける歩行者が似たような香水をつけていたからだ。
フローラルなローズ系が、この国ではトレンドなのだろう。
ｹｲﾄ｢いきなり！？てか、飛行機はどうするの？｣
もう既にチケットは買ってあったが、乗らないことにAは何も感じなかった。
高いお金もドブに捨てる勢いだ。
そこまでしてでも、スミスもしくは監督生のことが心配だったのだ。
｢箒で飛んでいく。｣
あまりにも無謀な考え方にケイトは言葉が詰まった。
いや、あまりにも馬鹿すぎて呆れたのだ。
1度決めたら止まることを知らないAは、辺りを見回してほうきのお店を探していた。
わざとなのか、急いでるのか。
ケイトは先程から目線の合わない顔に両手を添え、無理やり目を合わせた。
添える、とは生易しい表現だったかもしれない。
現に、Aの両頬は少し赤くなっていたし、乾いた音も響いた。
｢……なんだ？｣
ｹｲﾄ｢……そうやって、1人で勝手に決めて進むの、よくないと思うな〜。｣
｢だが、……。｣
悪く言って暴走特急。
Aは、難しい目標があったとしても必ずそれを遂げる性格だった。
中途半端にならないことはいい反面、その過程については褒められるような手段でないこともしばしばあった。
｢……はぁ。…スミスたちが飛ばされたそうだ。｣
ｹｲﾄ｢飛ばされた！？｣
落ち着きを取り戻したAにケイトは両手を下ろした。
まだ赤みが残っているため、少しの罪悪感が身を纏った。
｢砂漠の果て……というべきか、とにかく、すぐに向かわなければならない。｣
これで分かったかと言わんばかりに、改めてトランクを抱えた。
そうはさせるか。
ケイトはトランクの持っていない暇な腕を掴んだ。
ｹｲﾄ｢それ、行かなくていいんじゃないかな？｣
｢……は？｣
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作者名：あかまる | 作成日時：2022年11月6日 14時
