説明して ページ46
ｴｰｽ｢黙って着いてきてみれば、なんで縄で縛り付けられないといけないワケ！？｣
ﾃﾞｭｰｽ｢きっと、ジェームズ先輩にもなにか考えがあるのだろう。｣
ｴｰｽ｢はぁ！？そんなわけないだろ！｣
ｳﾞｨﾙ｢ちょっと、アンタたち！動かないでちょうだい！
縄が肌に食い込むでしょ！！｣
相変わらずの騒々しさである。
1本の丸太に3人が円になるように縛られている。
口を閉じることを知らず、捕まっていることを忘れているかのように、ある意味楽しそうである。
Aは、自分の手が思い通りに動くことを確認すると、彼らの縄を解こうとした。
しかし、縄に触れることはかなわず、尖ったフックは縄を切ることを許されなかった。
「はぁ、すまない。解けそうにない。」
エースたちからすれば、Aが縛ったはずなのに、本人が解けないとはいかがなものである。
手が縛られてなかったら、一発殴っていたかもしれない。
Aは、窓の外からなにか並々ならぬ脅威でも感じたのか、いつもの雰囲気とは一風変わった視線そこへ向けた。
外には、奥深い森と、それからはるか遠い地上、まだまだ手だ届きそうにない空が、島の終わりを感じさせないほどその生を謳歌している。
ｳﾞｨﾙ「それ、ちゃんと説明して。
アタシたちが動けなかったのも理由があるはずよ。」
ヴィルは、どんな状況下に置かれても、冷静な判断を下すことができる生徒だ。
役者の人生が彼をそうさせるのか、根本的な彼の性格が何にも動じないのか。
ヴィルたちは、仕方ないから縛られますね、といっておとなしく縛られるような器ではない。
抵抗することができず、まるで脚本にそうしろと命令が描かれているかのように、その意図に沿わない行動は封じられた。
｢…ここは、物語の中だ。
筋書きの通りにしか動くことが出来ない。｣
ここで浮かぶは、なぜ今自由に動けるのか、だが、答えは簡単だ。
物語には、書かれない部分がある。
毎日の夕飯、その時の会話、寝る前の思考、意味をなさない会話。
その全ては、現実では必然であり、物語では省かれる。
今、この時点では物語のスポットライトはケイトたちに当たっていると考えれば、語られない裏は、ストーリーを大きく乱さない限り、自由なのである。
ｴｰｽ｢俺ら、物語に入った覚えがないんですけど。｣
｢まァ、一般的には物語に入ると言われてもピンと来ないだろうが……。
言い方を変えよう。
ここは、ユニーク魔法によって創られた仮想空間だ。｣
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作者名：あかまる | 作成日時：2022年11月6日 14時
