Tinker of fairy ページ36
寝ているユウの元へ淡い金の粒子が飛んでくる。
たまたま目が覚めてしまっていた監督生は、その塊を見てしまった。
ふたつに割れると片方は監督生の胸へ、もうひとつはグリムへの中へと入り込んだ。
ﾕｳ｢(ど、どういうこと！？)｣
布団から出て、右に左に回るも体に違和感は無い。
しっかり心臓も脈を打っているのだから、死んではいない。
しかし、夢だといって終わらせるにはあまりにも現実味があるというか……。
部屋に飾られている鏡が波を打ち始める。
どこからか声が聞こえてくる。
この現象は何回も経験済みである。
迎えが来たぞ、ティンカーベルよ。
ﾕｳ(ティンカーベル？)
貴様は、何者でもない。
だが、それは、何者にもなれる証。
ﾕｳ(何者でもない……？一体、どういうこと？)
ティンカーベルよ。
彼の者の心を救いたまえ。
現実と夢を繋げよ。
いつも通り、何を言っても自分勝手に進めてしまう。
引き受けるなど、言ってもいないのに、勝手に救うことになることになっている。
というか、彼の者って誰！？
謎の声は、それまでと違ったはっきりとした意志を持っている。
今まで、多くの人物名を前にして、こうするべきだ、と指示していたのが、今はやれ、だ。
何をそんなに切羽詰っているのやら。
しかも、知りたい情報は伝えてくれず、会話が成り立たない。
会話というのは、言葉のキャッチボールである。
しかし、相手側から一方通行でそのボールが投げられてくる。
拾って、投げ返したとして、相手はそれを取ってはくれない。
ただ、疑問を捨てれば、自分のやるべきことは見えてくる。
自分の使命は、『彼の者の心を救う』こと。
その目標を達成するためには、『夢と現実を繋げる』こと。
人間とは好奇心の塊。
従って、そう簡単に疑問を捨てることは出来ない。
監督生は頭を抱えた。
鏡は、もう何も喋ってはくれなかった。
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作者名：あかまる | 作成日時：2022年11月6日 14時
