【ツイステ】船長の冒険記Ⅱ (ページ4)

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急ぎの電話ページ4

スミスのスマホには発信中の文字が表示された。
カーテンで閉まっている窓の外には、ジュエリーショップのショーケースをひっくり返したような幻想的な景色が広がっている。

遅い時間に連絡するのはどうかと思ったが、Aは賢者の島にいないことを思い出した。
2、3コール後に、待っていた声が聞こえた。

『スミスか？
手短に済ませろ。五分以内だ。』

電話の先から交通機関のアナウンスが聞こえてくる。
時間がない時にかけてしまったようだが、まだ乗っていないようで助かった。

スミス「はい！
ジャミル・バイパーさんについてですが、何かご存じのことはありますか？」

『聞いたことはあるが、会ったことはない。どこの寮なんだ？』

随分と曖昧な表現に違和感を持ちつつも、時間に追われていることを思い出し手短に要点だけを伝える。

スミス「スカラビアです。」

『お前の友達が寮長を務めているところじゃないか。』

どこか聞いたことのある会話の流れを無視して、質問の答えを催促する。

『ふむ、確かバイパー家は一家代々受け継がれていくアジーム家の従者ではなかったか？
…待て、そのことを踏まえるとジャミルという生徒は宴の坊に好きで行動を共にしているわけではないのか？』

といいますと、と聞き返した。
要するに、アジーム家の従者として長年従ってきたバイパー家に生まれたバイパーさんは、カリム君が嫌いだったとしても、側近としてそばにいなければいけなかったのかもしれないということだ。

この仮説が正しければ、バイパーさんはカリム君に大きな嫌悪感を抱いているに違いない。

『聞いているか？おい、スミス！』

いきなり怒鳴り声が聞こえてきた。
物思いにふけっていたため、船長の声が届かなかったみたいだ。

『いいか？絶対に波風立てるんじゃねェ。

今、ナイトレイブンカレッジはオーバーブロッドする生徒が多発している。
もし、そいつがオーバーブロッドしたとして、俺様のいる薔薇の国から賢者の島は少なくとも一日はかかる。

助けに行くことはできないし、スミスにもまだあの船の操縦魔法を教えていない。』

驚いた。
驚きすぎて、時間が止まった。

というのも、船の操縦魔法は代々寮長になる生徒に受け継がれている。
船長の言うことが実現するならば、次の寮長は私にするということ。
バイパーさんの件を全て忘れるくらいにはビッグニュースだった。

気がつけばスマホからは電話が切れた音だけが繰り返していた。