【ツイステ】船長の冒険記Ⅱ (ページ30)

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海賊が奏でる協奏曲① ページ30

タッタタ、タッタタ、タッタタ。
地鳴りのようなティンパニの一定のリズムが会場に響きわたる。

タッタタ、タッタタ、タッタタ。
何かの訪れを待つように低く唸る。
徐々に大きくなるその鼓動は人々の心の臓を震わせる勢いで駆け抜けていく。

ティンパニの前をスネアドラムが走り始める。
少し高い金属の音の重なりが先行し、後ろから大きな波動がそれを追いかける。

嵐が来る予兆。
騒がしい客員はその音楽に魅了され、口を閉じ身体を固ませる。

力強いヴァイオリンが一斉に入ると同時に、赤と黒の豪華な海賊船が雲を突き破り空に出現した。
重々しい塗装が日光を反射し、3本のマストに紐で括り付けられた大小様々な帆が風を全身に持て余すことなく受けている。

船首にて気高く先導する隊長。
紫のコートは、寮生である証。
気品のある金属のボタンが幾つも付けられ、その周りは金の糸で刺繍されている。
近くで見ればそのボタンにも模様が入っていることだろう。

コートの下にはベストであるウエストコートが着用されている。
鮮やかな赤と華美な装飾。
中世ヨーロッパの貴族を彷彿とさせるコーディネートである。
レースがあしらわれた胸飾りのジャボがその品格を示す。
赤紫の宝石が首元で光っている。

赤紫単色の帽子にふわりと羽飾りが舞う。

アイドルで例えるならば不動のセンター。
登場するだけで存在力に圧倒され釘付けになってしまう。

彼の名前は、A・ジェームズ。
海賊の一味を取仕切る船長である。

左手のフックを前へ突き出す。

それを、合図に寮生たちはマジカルペンを振り上げた。
残る薄い雲を遠くへと斥け、海賊船は快晴を背景にその全貌を人々の目に映らせた。

空気の大砲、魔空撃(スカイキャノン)の仕業である。
ジリーロジャー寮のオリジナルの魔法の一種だが、使用用途はとても難しく扱いづらいことからも、卒業生たちに悪用されることは全く無い。

1・2・3・
1・2・3・

それぞれの泊でヴァイオリンの音が揃い、迫力が増す。
足音が揃う時のように、止まるところでピタリと音が揃う。
生演奏だったならば、この音に合わせてヴァイオリンの弦が揃っていたことだろう。

そして驚くことはこれがまだ始まりに過ぎないということである。
観客はもう既に興奮状態であり、クライマックスを迎えたような勢いで歓声をあげる。
黄色い声もどこからか聞こえてくる。

音楽にトランペットなどの金属楽器が加わった。