手綱の握り方 ページ23
｢てめェがその答えに辿り着いたことは賞賛してやる。
だが、俺様はまだ許してはいない。わかるな？｣
ｱｽﾞｰﾙ｢スミスさんの戦略のこと、でしょうか？｣
監督生は、その言葉で思い出した。
ジャミル先輩がオーバーブロッドした時に、スミス先輩が立てた戦略のことを。
スミスを封じることで簡単に砂上の楼閣の如く崩れるような脆い戦略だった。
｢フン。俺様たちの寮は、自分を捨ててまでも誰かを助けようとする馬鹿の集いだ。
だが、何故俺様たちが団結できるか分かるか？｣
アズールは沈黙を貫いた。
もちろん答えは分かっている。
それを口にするには、
｢誰かを死なせないようにするためには、自分たちが死んではいけないからだ。
スミスの扱い方には気をつけた方がいい。
今のてめェではまだ役不足に見える。｣
ｸﾛｳﾘｰ｢失礼します。｣
スタッと黒い鴉が舞い降りる。
あまりの出来事に皆でうわぁぁと驚いてしまった。
いきなり現れるのは心臓に悪い。
学園長は、Aに話があると言って彼を学園長室へ連れ去ってしまった。
しかも、Aは学園長について行く前になかなか刺激的な台詞を残していった。
｢きのこの坊から聞いたが……、タコのカルパッチョは美味いらしいじゃないか。1度食べてみたいものだ。｣
どう考えても蛸の人魚であるアズールに対しての侮辱だろう。
取り残されてしまったアズールだが、果たしてあれは仲直りでいいのだろうか？
そんな気疲れも数日。
ある日、スミスからアズールに話しかけられた時は、とりあえず許して貰えたのだろうと安堵した。
しかし、その許しもあまりに残酷で、スミスと話す分のみの許しだったのだ。
VDCまでの全ての寮長会議で、アズールとAが話すことは無かった。
だがアズールが何の行動にも移さなかったのは、恐らく分かっていたからだ。
それが、タコが嫌いな彼の通常運転に過ぎないということに。
｢……それは、本当ですか？｣
ｸﾛｳﾘｰ｢えぇ。｣
Aの額に深い皺が刻まれた。
先程よりも怒りを顕にしていることは明白だった。
さて、ここで彼の今年1番のニュースが『魔法士養成学校総合文化祭の開催地がナイトレイブンカレッジになったこと』だったことを訂正しよう。
彼の本当のビッグニュースは──
｢何故、私から居場所を奪うのか。やはり、悪は善など望んではいけなかった……。｣
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作者名：あかまる | 作成日時：2022年11月6日 14時
