【ツイステ】船長の冒険記Ⅱ (ページ14)

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命令を遂行せよページ14

たまたま読んでいた『お髭船長の冒険』に感情移入をしていたからか、[船長(わたし)の邪魔をするな]という詠唱から始まった。

その魔法は、スミスのパーソナルスペースを守ると同時に、より人と関わる機会を失わせた。
その事が余計に人見知りを加速させた。

間接的ないじめに面白みを感じなくなったのか、いつの間にかいじめは消失し、自然と彼はクラスの中で孤立した。

災いから身を遠ざけるバリアは、人との巡り合わせ(縁)からも壁を築き上げた。
友達がいないスミスはそのことに気づかなかったし、クラスメイトもその壁を打ち破れなかった。

そうしてナイトレイブンカレッジの生徒に選ばれ、ジリーロジャー寮に入った。
その頃の船長(先輩)は、いまより自由煩悩で、傍若無人だった。
争い事ばかりの彼を見て、絶対自分と仲良くはならないだろうなと思っていた。

禍々しく怨念の籠ったようなジャミルの背後の魔物。
魔物の判定をクリアしているとは言い難い。

スミスは鋭くその目を光らせた。

船長に任されたこの責務(命令)。
ユウさんを護るため、危険個体は排除しなければならない。
それが、船長の命令。
そして、船長の命令は絶対……！

ｽﾐｽ「アクアウェーブｯ…！」

水の柱が天へと向かって勢いよく沸きあがる。
クリティカルヒットしたのか、ヤツは砂となって空へと消えていく。
勝利した。

……なんの取り柄もない自分が、勝利した！！

自然と涙が溢れ出る。
舞い上がる砂は小さい星々のように輝いている。
とても、綺麗だった。

晴れやかで清々しかった。
しかし、周りの皆は勝利を喜ぶ前に、倒れ込んだバイパーさんの元へ駆け寄る。

その瞬間、スっと頭が冷えた。
今の自分は人の安全よりも、勝利の余韻に浸っていた。
人間として欠陥している何かを感じた。

カリムがバイパーさんに必死に声をかける。
そんなに煩くされても、起きると思うよ。

ジェイドさんが呼吸やら心拍数やらなんやらを確認している。
ただ気絶しているだけですよ。

心配そうに見守る監督生。
グリムさんは、少し怒っているようにも見える。

そうか、自分は心が冷たいのだ。
かつて、自分をいじめた人たちと同じなのだ。

船長はやられたら、やれたままになんかしない。
それを残虐だの狡猾だの、文句をつける輩がいる。

……私も同じ人間だったのだ。
船長と、そして、ジリーロジャー寮のみんなと。
残忍で狡猾で……、彼らとは暮らす世界が別だったのだ。