はよ逃げてや ページ10
耳についている無線から着信が入る。
体裁を気にして、王から少し離れたところで身をかがめる。
他国であれば無礼者として、戦争を吹っ掛けられるかもしれないが、長年付き合ってきた関係があり、心配しなくても大丈夫そうだ。
スピーカーに手を当て、自分の声が届きやすいように口元を軽く覆う。
sha｢グルッペン！民間人がテロ行為を起こしとる！はよ逃げてや！｣
gr｢なに？どこの道が安全なんだ？｣
sha｢わからん！他国の警備員と抑えてるが、民間人を殺すわけにもいかんし…。
とりあえず、正面玄関は使えん！！｣
とにかく、外では重大な事件が起きているようだ。
最も優先すべきことは、国王に通じて各国の使者をいち早く避難させることだ。
受け取った連絡を国王に伝えようとすると、鬱が心臓を押さえ苦しそうに悶えた。
身体の器官が麻痺しているのか、急激に体温が上がっているのか、汗が止まらずに流れている。
会場の中の貴族たちにも、その苦痛を一定数味わっているものがいた。
その時、大きな衝撃が会場を襲った。
割れた窓ガラスから見えたのは、濛々と上がる煙と止まる勢いの無い火の車であった。
この場所に火が届くのも時間の問題である。
使えない窓から煙が侵入してくる。
警備員が身をかがめて移動するようにと伝えているが、混乱の中話を聞いてくれる貴族たちはいるのであろうか。
世間話に花を咲かせ、自分たちを優先する貴族の考え方には、昔も今も反吐が出る。
A｢皆の者、警備の者の指示に従い、迅速に避難するのじゃ！
体調が悪いものは、手分けして外へ運び出せ！｣
ゾムが近くに来たため、周囲の状況を聞く。
その間、オスマンには鬱に血流を遅くする薬を飲ませておくように指示を出した。
万が一、知らない毒が盛られても身体へ回らないようにするために、wrwrd国トップの軍医しんぺい神が血流を遅くする薬を開発したのだ。
外交に行く際には必ず持つように伝えてある。
解毒とまではいかないが、多少毒の進行を抑えてくれるだろう。
オスマンは鬱のポケットに手を突っ込むが、肝心の薬がどこにもない。
ズボンからジャケットに行き、ようやく胸ポケットに薬があるのを確認すると、水もない中、その薬を飲ませた。
水が無いと錠剤はのみにくいがまぁ緊急事態だ。
息苦しそうに咳をする回数が、徐々に減っていくが、この薬、こんなに効き目が早かっただろうか？
ut｢多分、赤ワインに、ゴホッ、入れられてたんやろ｣
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作者名：あかまる | 作成日時：2023年11月21日 18時
