試しに飲んでみましょう ページ8
ウェイトレスが赤いワインを配り始めた。
真っ白なテーブルクロスだけが敷かれていた机上には、立って食べれるような簡易な食事が置かれていく。
サンドイッチのような軽食から、ハムのようなおつまみまで、様々な料理が並んでいた。
もう既に三人もの王族や貴族を相手にし、くだらない世間話を交わしたグルッペン達の喉は乾ききっていた。
そうでなくても、ワインや食事を楽しむことで世間話のネタくらいにはなる。
そう思ったグルッペンはウェイトレスに目配せをし、近くまでワインを運んできてもらった。
銀のトレイに置かれたグラスを二つ取ると、その一つをオスマンに渡した。
gr｢喉が渇いたな｣
os｢ほんまに｣
軽い会話を交わして、いざ飲もうと口をつけようとした時だった。
グルッペンのジャケットの裾が何回か引かれる。
それに反応し口元から遠ざけると、オスマンも何かあったのかと思い、一口飲んだグラスを手元まで下げた。
｢こんばんは、グルッペン閣下。
そちらのワイン、あまりお口に合わないので止めておいた方がいいと思います｣
gr｢いきなりだな。
オスマン、どうだった？｣
いきなり見ず知らずの人にそんなお節介を焼かれる筋合いは無い。
何か罠があるのではないかと、無駄に警戒したグルッペンは先に一口飲んだオスマンにその味を聞いた。
オスマンが飲んだワインは至って普通だったが強いて言えば、パーティ会場で出される味にしては少々お粗末であった。
os｢いや、飲めんほどではなかったな｣
gr｢我が国の美食家がこう言っている。
なんのつもりだ？｣
自分に嘘をつかず、そのままワインが不味いと言い張るならば、wrwrd国に対する侮辱と見なすことができる。
かといって、はい、本当は美味しいですと、つまらないことを吐かす訳にもいかないはずだ。
｢……、分かりました。
試しに私が飲んでみましょう｣
グルッペンのグラスを受け取ると、ワインではありえないくらいの角度で全てを飲み干した。
麦酒では一気飲みという文化があるらしいが、ワインは基本的にアルコール濃度が高く、風味がいいため、じっくりと味わうことがマナーである。
この前の外交とえらく態度の差があるではないか。
一歩引いて達観しているような立ち位置をキープしていたが、今日はやけにぐいぐい来るのである。
｢確かに、私が想像していた味よりもはるかに優れていますね。
勘違いしていたようです｣
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作者名：あかまる | 作成日時：2023年11月21日 18時
