招待状 ページ6
だが、例え中身は五歳だとしても、脳みそは五歳では無い。
この軍事国家の総統は、生ぬるい腐った老害ではなく、カリスマ性を持った名君であった。
gr｢必ずそいつに[入らせてください]と言わせてやる｣
なんとも無謀な考え方だ。
だが、彼にはそれを実現させてしまうほどの実力を持ち合わせている。
有言実行、言葉にしたからには、なにか算段が付いているのだろう。
そして、その目はかの国の薄れゆく陰を映し、その耳はかの国の消えゆく独り言を捉えてる。
gr｢そういえば、オスマン宛の手紙があるゾ！｣
書類の山が置かれた古い書斎机。
先代から使われてきた年代物であるが、その芸術的価値は計り知れないほどに高騰している。
その机の脚は透かし彫りがなされているが、近年その芸当ができる職人が減少傾向にあるからだ。
動物や植物の流動的なデザインが特徴であるが、膨大な時間をかけて彫り上げることや量産できない一点物であることから、値段をつけると庶民の手が出ない物になってしまう。
軍事国家であるwrwrd国の貴族は、木造の装飾品よりも金属や織物に拘る傾向があり、なかなか買い手が見つからないことからも、その界隈を衰退させてしまっている。
グルッペン専用のその机には自由な大空へ羽ばたく大鷲のレリーフが机の側面に彫られている。
浮き彫りと透かし彫り。
この二点の技術を惜しみなく活かしたアンティークの机。
この要塞の中でもトップを争えるほど値段が張ることだろう。
グルッペンは机の引き出しから一日前に届いた封筒を取りだし、A国の国旗がデザインされた暗い赤色の蝋を切った。
一度も開いたことが無い封筒の中身がオスマンに関係する内容、つまりパーティーの招待状であるとなぜ分かっていたのだろうか？
A国には建国記念日が定められている。
そのお祝いはA国のなかでも最大規模で、表面上では歴史ある建国を祝福しているが、外国のお偉いさんが集まる場所であることから、毎年参加している常連国は裏の情報が飛び交う交流の場と認知している。
この時期の公式な手紙としては、そのパーティーへの招待状しか考えられないのだ。
半分に畳まれた手紙には、少し長めの季節のあいさつの後、目的であるパーティーの日時・場所などが丁寧に記されていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 109人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あかまる | 作成日時：2023年11月21日 18時
