そっちにはいません ページ33
彼の準備も整ったようで、ようやく作戦実行する時が訪れた。
再度この部屋にノックが響き渡った。
安否を確認している警備員に対して扉一枚を挟んだ状態だが、彼はその扉に左ストレートの合図を出した。
よく分からないが殺っていいという合図だろう。
打ち合わせをしていないのに、何故かわかる。
バキィと音を立てて木製の扉が外へ弾かれる。
警備員は狭い廊下で目の前の飛んでくる扉から逃げれず、その下敷きとなって前歯が二本ほど折れた。
｢侵入者、いましたよ笑
本当に警備が整っていないのですね｣
伸びている警備員に対して嘲笑している外交官を見ると、やはりオスマンの面影が見えて、あの紳士的な態度は偽りなのかと思ってしまう。
二枚舌では足りなさそうだ。
コネシマが目的地へ向かおうとすると、ぐいっとシャツを引っ張られたため、死ぬかと思った。
｢そっちにはいません。下へ続く階段しかありせんから｣
kn｢地下牢にいるんやないんか？｣
捉えられた人質は牢屋の中にぶち込まれ、劣悪な環境と性格が腐っている監視官がいる中、生活しなければならないというのが、一般的な見解だ。
コネシマの知る劣悪な環境は、地下牢しかなかった。
だがかの外交官が言うには、このスゥイク神殿にある地下牢は宗教的犯罪者が収容される施設だそうだ。
そこに外国人を入れるには、悪い言葉で言えば汚らわしい、良い言葉で言うのなら不都合が生じるらしい。
｢ショッピ様は上にいるでしょう｣
上の階には基本的お偉いさんしか入れないが、その中でも倉庫的な役割をしている部屋があるらしい。
その部屋で管理すれば、警備も固いし窓から逃げられる可能性も無いと言うのだ。
kn｢おま、神殿の内部構造なんて、どこで知ったんや｣
｢外交官ですので、当たり前です｣
さすがにオスマンも相手の国の施設に訪問する時、城内の地図は頭に入れてないと思うが。
初見でコネシマのことを突き止めたのは、もしかしてwrwrd国の幹部メンバーをある程度頭の中に入れてあるのかもしれない。
こんなに情報を持っているくせして、やはりグルッペンとは頭の良さが違うと感じた。
オスマンがやけに手札が多いことを褒めていたこともあり、膨大な選択肢から選ぶのは得意だが、その選択肢から新しい選択肢を作ることは苦手そうだ。
そういった奴はグルッペンのような猛者の下に就くと実力を発揮できるが、彼がそうしない理由は先刻の体罰の件でも絡んでいるのだろうか。
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作者名：あかまる | 作成日時：2023年11月21日 18時
