心に秘める悪魔のせい ページ22
夕食を終え各自の部屋へ戻る中、オスマンは誰かの会話を聞いた。
相手から見えないように、壁で自分の位置を隠しながらその内容に耳を澄ませた。
D｢もしかして、ご存じでしたか？｣
先ほど聞こえた話声は、料理を変えたことによるお礼の言葉だったようだ。
D国の使者は少し戸惑いながらも、Aに質問したが、当たり前のように言った。
｢貴国の国教では、毎月6が付く日は殺生された料理は食べないとお聞きしました｣
D｢…貴国のご好意、深く感謝いたします｣
宗教には牛や豚を避ける文化がある。
B国が信仰している宗教は牛を食べてはいけないので、ディナーはチキンを頼んでいた。
その点先程のD国の食事事情は、かなりマニアックだと思う。
一般的に殺生された食事全般がダメ、という宗教は少なく、その命を大事に食べることが多い。
しかもそれが6の付く日と決まっているのならば、珍しすぎて知らなくても仕方がない。
そういった決まり事がある中で、C国は故意に肉料理を用意したのだ。
D国が難癖をつければ開戦待ったナシだが、黙って神の教えに逆らうのも無理難題である。
問題に気づいた彼は、不自然ながらも野菜のメニューへ変えてそれを渡したのであった。
第三者の勝手な行為であれば、マナー違反と追求されるだけであって、戦争まで発展することは無い。
彼がD国と別れ階段へ向かっていくところを見ると、慌てて追いかけた。
os｢君はほんまに情報がたくさんつまってるんやね｣
｢…オスマン様｣
不意に現れたオスマンに、彼は片眉を上げ、先程の会話を盗み聞きされていたのだと察した。
os｢なぁ、一つ提案なんやけど、うちの国で働かん？｣
ここまで優秀な人材はやっぱり、グルッペンを気に入るだろうし、一緒に仕事をしていて楽しいと思う。
彼は情報の引き出しは多いが、頭は特段優れている訳では無いので、その情報を最大限活用できる上司が必要だ。
グルッペンならばそれは可能だし、きっと彼にとっても悪くない話だと思っていた。
｢……それは、私に国を裏切れというお誘いでしょうか？｣
空気が凍る。
早計すぎたか、と反省するが、論理的に行動している彼の根幹が国への忠誠だと誰が思うのだろうか。
しかも、近年の傾向的にそういった国への忠誠の文化は廃れてきている。
｢オスマン様、正直に言うと私は貴方を過大評価していたようです。
今の言葉は貴方の心に秘める悪魔のせいにしますので、二度とくだらない引き抜きはお止めください｣
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作者名：あかまる | 作成日時：2023年11月21日 18時
