11.ガーベラ ページ11
｢ごほっ……｣
起きろと言わんばかりの吐き気に襲われ、重たい瞼を開くと自分が今何処にいるのか一瞬わからなかった。
だが見覚えのある天井だった為、すぐここが何処なのか理解することが出来た。
……保健室だ。
どこかの遠い世界ではないことに少しホッとした。
まだ生きていたのか。
流石私の生命力。
最早ここまで来ると自分に嫌気がさしてくるものだ。
｢……起きたか｣
突然、どこか心の底から安心できる声が聞こえた。
その声の持ち主の方に目を向ける。
前のようにリカバリーガールがすぐ目に入るのかと思ったのだが、今回は違った。
｢勝己……｣
ずっと顔さえ合わせなかった、私の想い人の爆豪勝己だったのだ。
正直驚いた。
もう終わってしまった、と思っていた相手だったのだから。
言葉には表せない嬉しさを感じたが、それも一瞬のことだった。
｢ババア、こいつもう起きたから俺行くわ。｣
勝己は目覚めた私を確認し、バッグを持った。
察してしまった。
察したくも無かった。
リカバリーガールが、勝己をこの場所に留まらせていたのだと。
｢おいおい、ちょっと待っておくれ。｣
｢うるせえ｣
勝己はリカバリーガールの言葉を無視して保健室から出てしまった。
シン……と部屋は静まり返った。
｢……当然の結果ですよ｣
私は少し動かしにくい顔の筋肉を使い、頬をあげる。
｢これが私の最期です。｣
もう、何も望まない。
｢勝己の顔を見ることが出来た、私には勿体ない贈り物です。｣
私は淡々と口から言葉を出すが、リカバリーガールは何も喋らなかった。
｢本当に、ありがとうございました。｣
目を焼き付かせるような一粒の涙が頬を伝う。
こんな時だと言うのに、私が嫌いになってしまった花の香りが鼻の奥から匂わせてくるのだ。
するとリカバリーガールは私の手を、私よりも小さい手で、優しく包み込むように握った。
そしてこう続けるのだ。
｢まだ、間に合う。｣
と。
｢で、でも勝己は…｣
｢悔いを残さないようにしなさい｣
私の声を遮るようにリカバリーガールは怒ったように言った。
そしてまた、優しい声で
｢……大丈夫、大丈夫。｣
と言うのだ。
｢っ……｣
私は涙が沢山溢れそうになった。
｢ほら、行きなさい｣
背中を押された。
｢…ッありがとうございます！｣
私は保健室から出て、最期のチャンスに賭けて必死に走り出した。
愛する人に、伝えるために。
ガーベラ 花言葉
勇気
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 543人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
いちきちゃん - とても素敵なストーリーでした｡花言葉も､細かくて好きです｡ (2023年2月12日 23時) (
レス) @page15 id: bbdd29e3b1 (このIDを非表示/違反報告)
リンリン - めっちゃ泣きました！！大泣きですぅ、！花言葉すごいです？ (2022年4月25日 21時) (レス) @page15 id: 4f44d2c38e (このIDを非表示/違反報告)
やま - なんか今見てるのめっちゃ遅いと思いますけど…ガチでめちゃくちゃ泣きました… (2021年1月24日 17時) (レス) id: 5d961f6072 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 完結お疲れ様です！花言葉になぞらえての物語、面白かったです(*´ω｀*) かっちゃんとラストの両想い感動しました…っ 花言葉を知れたのも面白かったです♪ (2019年3月6日 20時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)
あむ(プロフ) - めっちゃ感動しましたー！！本編とは関係ないのですが｢トイレに花流したら詰まるんじゃない？｣っていう文ツボりました。 (2018年9月15日 20時) (レス) id: 96dfa0018b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：荼毘
| 作成日時：2018年8月10日 13時
