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「おかえり、傑」

「ただいま。そっちも任務終わりかい?」

「うん」

「おつかれさま」

彼は私へ微笑み、頭に手を置く。

彼の大きな手は私を安心させた。とても幸せだった。


「傑、好きだよ」

「どうしたんだい?いきなり」

少し驚いた顔をして、すぐに元の笑顔に戻った。

「ねえ、傑は?」

「私もだよ」

これが、嘘だとしても私は嬉しかった。

好きだと、愛してると、その口で言ってくれなくとも、嬉しかった。


「…あっ、まだ報告行ってなかった」

「一緒に行くかい?」

「いや、大丈夫!少し長引いてしまいそうな報告なんだ。損害とか色々…」

「はは、それは大変そうだ」

手で口を隠し、上品に笑う傑。その姿もとても格好良い。

「それじゃあ…ばいばい、傑」

私は傑を通り過ぎるが、それを傑は私の腕を掴み、行く手を止めた。

「…あ、いやなんでもない」

少し焦ったような顔をして私の腕を離した。

おそらく傑は私の「ばいばい」の言葉に反応してしまったのだろう。

やはり似ているのか、この声。

四肢が切れたような感覚に陥った。

五条に言われて既にわかっていたことだったが、明らかになってしまうとショックだった。

「…私の声って、傑の前の恋人に似てる?」

思わず、口に出してしまった。

これは言ってはいけない地雷だった。

そもそも私から彼女の話をすることなんて一度もなく、私の中では自然に禁句となっていた。

ハッとした時にはもう遅い。私は傑の顔を一瞬でも見ることができなかった。


「……誰が言ったの?」

その低い声で身体がビクリと動いてしまった。

傑は、珍しく怒っていたのだ。

「ご、ごめんね〜。なんでもないよ」

私は軽く笑い、逃げるようにその場を去った。

傑の顔は、まだ見ていない。



その時でも聞こえてしまう彼の首元にある指輪が重なり合う美しい音を、憎悪が湧き上がってくるように呪った。



.


任務の報告を終え、私は自室に戻ると、走ってきた訳では無いのに息が上がっていた。


この声が憎い、彼女と似たこの声が大嫌いだ。

でも私にはこの声しか取り柄が無い。この声しか、傑に愛してもらえない。

色々な感情が入れ交じり、胸の奥から苦しみが広がっていく。


「っはあ」

呼吸が上手くできず、まるで切れないロープで首を強く絞められているようだ。

苦しくて、涙が出そう。


私はこの日から、傑を避けるようになった。

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rix(プロフ) - 尊さん» お待たせ致しました!只今公開致しました〜!!犬小屋から出てきてくださ〜〜い!!!!お家に帰りますよー!! (2021年3月27日 9時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
- rixさん» なぬ、神様の作品なら絶対読みます!犬小屋で地団駄踏んで待ってます! (2021年3月24日 17時) (レス) id: b48a344f5f (このIDを非表示/違反報告)
rix(プロフ) - 尊さん» コメントありがとうございます!わー!そう言っていただけると嬉しいです(;;)休日に新作出すと思うので是非そちらもお読みいただけると嬉しいです笑 (2021年3月24日 17時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)
- めちゃくちゃ感動しました!あなたは神作の神様だったですね、一生崇拝します (2021年3月24日 14時) (レス) id: b48a344f5f (このIDを非表示/違反報告)
rix(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!よかったです!!笑自信結構なかったのでそう言っていただけると嬉しいです!! (2021年3月22日 13時) (レス) id: c4228ae6c4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:rix @元荼毘 | 作成日時:2021年2月28日 14時

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