私を忘れた先生へ【鬼滅の刃】 (ページ14)

今日:4 hit、昨日:6 hit、合計:209,512 hit

13 ページ14

紙が破られる音が銃声のように体育館に響く。

それは一度ではない。

何度も、何度も、裂くように。

｢こんなもんより数学を勉強しろ｣

壇上で不死川先生が玄弥の賞状を破いたのだ。

あの時は体育館に軽い悲鳴が起きた。

他の先生たちも顔を青ざめていた。

それは当の本人も同じこと。

あの玄弥の顔を思い出すと心が痛む。

｢不死川先生｣

私は不死川先生を逸早く呼び止めた。

私は珍しく怒っていた。

この炎のような激しい怒りを持ったのは、初めてかもしれない。

｢なんだァ、叶瀬｣

うちのクラスの数学担当だったこともあり、私達は顔見知りだ。

その為不死川先生は私の名前を知っている。

｢玄弥に、謝ってください。｣

｢…あ゛ぁ？｣

人を一人二人殺してそうな顔も今では怖くない。

私は動じることなく、不死川先生に向かう。

｢玄弥に謝ってください。｣

｢人ん家の事情に突っ込んでくるんじゃねェ｣

｢嫌です。無理です。｣

玄弥の努力の結晶が一瞬にして破られたのだ。

家族の事情であれど、玄弥の友達として黙ってはいられない。

“ちょっと不死川先生のところ行ってくる”と言った時には

“はぁ！？いいって！俺は大丈夫だから！”と炭治郎に慰められている玄弥は言ったが私はその言葉を完全に無視した。

今まで顔が怖いと言われ、皆から引かれる存在であったが今回に限り皆が玄弥に同情して、玄弥に友達が増えた。

そこだけは良いとしよう。

そこだけな。

｢私、不死川先生が謝るまで許しません。｣

｢勝手にしとけェ｣

そう言って私に背中を見せた。

あの人はどうかしている。

実の弟を傷付けて何がしたいんだ。

これは負けられないな。

炭治郎も言っていた。

“俺は長男だからな、俺が挫けることは絶対にない”と。

私も兄弟はいないが長女である。

不死川先生が謝るまで私は諦めない。

これから私の意地と不死川先生のプライドの戦いが始まろうとしていた。