馬鹿と単細胞。

Ep.３０ ページ31

Side 谷川





『───ほんとに送っていかなくて大丈夫？』





そろそろお暇しようか、ということになり
傷の手当てどころか晩御飯までご馳走してくれたAさんにお礼をいう。





「大丈夫ですよ。
女の子をこんな時間に連れ出せねェ」


『女の子って･･･、私スケバンだよ。
やっぱり心配だし駅まで送ってくよ、』





そう言って靴に片足をつっこんだAさんの肩を、今井さんが掴んだ。

･･･こういうときはさりげなくボディータッチしてるのになこの人。





「ダメですよ。
ココから駅まで遠いから」


『二人ともそんなに怪我してるのに？』


「俺は紅高の番格だぜ、
取るに足らないさこんな怪我」





ここまで心配してくれてるのはありがたいが、

もしもAさんが駅まで送ってくれたとして、
帰りがAさん一人では心配だから、とまた今井さんが戻ってきそうな気しかしない。
そうなるともう一生終わらない。




「本当に大丈夫ですよAさん。
こんな時間まですいません。
飯も美味かったです。ありがとうございました」


「谷川ァ！！俺の言いたかったこと全部言いやがったな！！！」


『ふはは、仲良いねぇ。
またいつでも遊びに来て』


「本ッ当、何から何までお世話になりました！！」





今井さんと二人でお礼を言って、
Aさん宅をあとにした。





「───イイっすねAさん。
綺麗で色っぺーし、優しくて料理もできて。完璧じゃないっスか」


「た、谷川まさかお前も･･･！？」


「そんなんじゃないっスよ。
ただ、あんな素敵な人なら彼氏くらいいるんじゃないかな〜って、」


「･･･････････････はッ！！」





忘れてたな。忘れてたなこの反応は。

Aさんしか頭に無くて他の男の存在なんか気にしてなかったなこの人。




「ど、どどどどどうしよう谷川！？」


「まだ男がいるって決まったわけじゃないですからね。
まだチャンスはありますよ今井さん！」


「そ、そうだよな！
俺にだってチャンスはあるよな！！」





今度こそ頑張ってくださいね今井さん！！




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