馬鹿と単細胞。

Ep.２８ ページ29

Side 今井






『───はい、どうぞ』

「お、おおおおおお邪魔します･･･！！」

『そんな緊張しなくても』




ガッチガチに緊張してる俺と谷川。


だって女の子の部屋なんざ人生初だぜ！？

しかも好きな人の！！
緊張しないわけがないだろう･･･。




( なんかいい匂いするしよ･･･ )




花みたいな、甘い匂い？
よくわかんねぇけどすげぇいい匂い。


Aさんが一人暮らししてるっていうアパート。

一人暮らしにしちゃかなり広いし
片付いてるっつーか、そもそも物が少ねェ。
最低限の物しか置いてない。




『物置くと散らかしちゃうんだよ〜･･･。
適当に座ってて。救急箱とってくるね』

「あ、ありがとうございます･･･！」

『ふふ、緊張しすぎ』




緊張しすぎて逆に気持ち悪いことになっているであろう俺。
谷川が若干引いている。




(･･････あ、)




テレビの横に置いてある写真立て。

すっげぇシブくてかっこいい男の人と、
色っぽい女の人がでけぇバイクの前で笑いあってる写真。
女の人は、Aさんに似てるような･･･？




『それね、うちの両親。
世界中旅しててね、あんまり帰ってこないから一人暮らしなんだよ私』

「なるほど、そういうことだったんスね！」




･･･なんか、俺と全然違ぇな。

全てにおいて洒落てるぜ。




『はい、とりあえず谷川くんから先に手当しよっか。
ちょっと痛いけどごめんね、』

「いってぇえ！！」




ごめんごめん、なんて半笑いで
谷川に容赦無く消毒液をぶっかけるAさん。
･･･怖ェ。怖ェのに楽しそうでめっちゃ可愛い。




『はいできた、次今井くん』

「お、お願いします･･･」

『ビビりすぎ』




だって谷川泣きそうになってんだもんよ！！

殴られるより手当される方が痛いってどんな状況なんだよ。


だがしかし！！
Aさんから手当してもらえるなんて
そうそうないからな！

男・今井勝俊、我慢してみせるぜ！！




『じっとしててね』





「 いﾞでェェェエ！！！！！ 」






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