人質【4】 (ページ34)

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Ep.１７５ページ34

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「───景山よりも先に死ぬはずだった俺が、
やるべきことはなんなのか･･･ッ！
自問自答を続けた結果、今回の計画に至った」

先生は息を整えて、私達を見据えた。

「───俺の目的は、3つある。
･･･ひとつめ。
武智大和に、自分の犯した過ちを気付かせること。
彼女達が味わった、苦痛を追体験させることで
罪の重さを知ってほしかった。
･･･そして、ふたつめ。
これが立てこもった最大の理由だ。
それは────────」

息ができないくらい、胸が痛い。

先生の思いだとかがズシンと伝わってきて、
それが涙となって私の目から溢れ出す。

先生はおもむろにポッケからナイフを取り出した。

左手を黒板に当て、ナイフをくるくる回したかと思うと。

─────ダンッ！！

己の左手に、思いきり突き立てた。

ナイフを引き抜くと、ドクドクと流れ出す真っ赤な血。

「･･･ッナイフを刺せば、血が出る。
痛みも、伴う･･･ッ、
場合によっては、命も奪える･･･！
当たり前のことだ･･･ッ。
でも、今の社会は･･･！こんな当たり前のことに
気が付く暇もないぐらいに、忙しく回り続けてる･･･。
相手に何をしたら傷付くのかッ、何をされたら、痛むのか･･･！
･･･お前達には、それに気付かない･･･感情が麻痺した大人には、なってほしくなかった」

「───想像力を働かせて、自分の言葉や行動に、責任を持つ。
･･･決断をする前に、踏みとどまって･･･ッ
これが本当に正しいのかを、問い質す。
誰もがわかっているのにできていない･･･！
･･･考えることの大切さを、皆には伝えたかった。
･･･それが、俺のみっつ目の目的だ」

何も考えずに発した言葉、
冗談のつもりで発した言葉が、誰かを深く傷つけているかもしれない。

“言葉” というナイフは目に見えない。
目に見えないぶん意識しないから、
知らず知らずのうちに振り回して誰かの心を殺していく。

誰もが被害者にも加害者にもなりうる、人間のいちばん身近にある凶器。

踏みとどまって考えること。

相手のことを考えること。

今まで一体私は、無意識のうちに、何人のひとを傷付けてきたんだろう。

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