人質【3】 (ページ3)

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Ep.９８ページ3

side Ogata

結局あのあと、逃げるように美術室を出てきてしまい。

『･･････あの腕とか足、全部偽物だった』

さくら達に伝えられたのはこの程度の情報のみ。

あとは、昼間に立てた作戦をいつ実行するか。

「偽物だったってことはやっぱり･･･！」

「でも確信はないしね。
姿見ないと安心はできないわ」

『･･･結局なんにも教えてくんないし、』

半ばやけくそだ。

どうせ好きなことには変わりないし。

「てかAってさ、ぶっきーのこと好きなの？」

「え、そうなの？」

『好き、っていうか･･･まぁ、･･･うん、そうだね』

「まぁ顔だけならイケメンだしねぇ」

未来のひとことに、思わず笑ってしまった。

『そうだね、ほんっと顔だけだね。
あぁもう、考えてたら腹立ってきた･･･！』

なんにも言ってくれなさすぎて。

私の気持ちに応えられないなら、はっきり言ってほしい。
そりゃもちろん、私は好きだから応えてくれるのならそれ以上のことは無いけど。

抱き締めたりキスしてきたり、思わせぶりなことばっかしてくるくせに「今はまだ何も言えない」ってなに？

あぁもう、むかつく！

「出た、ブラックA」

こうして誰かに好きな人の話をするのなんて初めてだし、好きな人だって一颯先生が初めて。

苦しいし、辛い。

でもこうしてちゃんと腹を割って話せる皆が聞いてくれるから、本当に救われていて。

『なんか体調悪そうだったし、今はとりあえずそれが心配』

「もはや嫁だよ、それ」

『･･･バイオレンスすぎるでしょ、アレが旦那って。
ていうか、華ちゃん須永くんのこと気になってるんだよね』

照れくさくなって、話題を逸らした。

「私が気になるっていうか、向こうが私のこと気にしてるっていうか？」

人質になって良かった、とは思わないけど。

人質にならなかったら、こうして皆と話すこともなかったんだって思ったらちょっとだけ、悪くないかも･･･なんて。

澪奈に話したかったことが、澪奈にしか話せなかったことが、皆にこうして話せてる。

それだけは、良かったのかな。

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