Ep.111 ページ17
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先生は私達を人質にとったその日、
マインドボイスのユーザー全員に1人100円ずつ、送金させようとしてたんだよね。
・・・でも、たぶん目的はお金じゃない。
『・・・・・・・・・あ、』
分かったかもしれない。
先生の考えていること、言っている意味が。
「・・・どうした、?」
咄嗟に洩れた声を甲斐に聞かれ、慌てて口を塞ぐ。
『ごめん、なんでもない。続けて』
確証はないから下手なことは言えず、里見くんの話を聞くしかなかった。
「・・・・・・実は先生、
────不治の病でもう長くは生きられないって・・・ッ」
頭が真っ白になった。
『・・・・・・嘘、だよね』
里見くんはゆっくりと、首を横に振る。
気付けばボロボロと涙が溢れていた。
足に力が入らなくなって、その場にへたり込む。
苦しがってたのも、もしかしてそのせいだった?
ねぇ先生。どうして隠してたの。
この4日間で相当な無理したよね。
頭だって大怪我負ったし、ついさっきも甲斐とやり合ってた。
不治の病ってなに?
長くは生きられないって、わかっててあんな無理してたってこと?
『・・・・・・ふざけんなよ・・・ッ』
何に対しての怒りか分からない。
分からないけど、どうしようもないほどに腹の底からふつふつと湧き上がってくる。
「あ、おい・・・!」
後ろから呼び止められる声も気にせずに、私は美術室を飛び出した。
飛び出したはいいものの教室にもいけずに、廊下に座り込んで泣きじゃくる。
『・・・・・・嫌だ、嫌だよッ・・・!』
一颯先生がいなくなったら、なんて考えられない。
考えたくもない。
息も上手くできないくらいに泣いて泣いて、それでも涙は止まってくれなくて。
「・・・A、」
顔を上げると、焦ったような表情の諏訪ちゃんが私の前にしゃがみこんでいて。
『・・・、諏訪ちゃん・・・ッ』
セーターの袖で私の頬を拭ってくれる。
「・・・・・・ごめん、私・・・」
諏訪ちゃんは思いつめたような表情で、俯いた。
『・・・なに、?』
「・・・やっぱなんでもない、ごめん」
そのまま、パタパタと美術室に入っていってしまった。
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わ - いつもみてます! (2019年3月12日 15時) (レス) id: c232dbe5e9 (このIDを非表示/違反報告)
麗 - 作者様、好きです。すこですすこ。 (2019年2月17日 10時) (レス) id: 8656a872ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しぃも | 作成日時:2019年2月17日 3時