Ep.97 ページ2
side Hiiragi
「“俺のためならなんでもする”、か・・・」
そんなことを言わせたかったわけじゃあない。
残された時間の少ない俺なんかじゃ、幸せにしてやることなんかできない。
自分の気持ちなんか分かりきってるし、それがあいつの求めているものだということも。
“ごめんな” の一言に全ての意味をこめて、Aを殴った。
案の定気を失ったあいつを預けるのには、Aに惚れてる甲斐がいちばん安全だってことも知ってた。
知ってたけど、己の中のわずかな嫉妬が渦巻いて、いちばん近くにいた不破に預けたけれど。
不破にしがみついて泣く姿を見て、結局誰でもよかったのかよ、なんて子供みたいな考えすら浮かんできて。
まともな治療もしていないから、隠し通すにも限界があるのはわかってる。
甲斐にも何かしらバレているだろうし、なによりもAは朝の時点で気が付いていた。
俺の顔色が良くないこと、痛みに耐えて脂汗が浮かんでいたこと、無理矢理気丈に振舞っていたこと。
恐ろしいほど周りを見ていると、改めて気付かされた。
「・・・どうしようもないな、本当に」
俺だって、まだ生きたい。
幸せにできるのなら、してやりたい。
愛される幸せを知らないあいつに教えてやりたい。
でも、俺じゃ無理だから。
たったひとり、俺のためだけに全てを失って欲しくなんかない。
まだ、あいつには時間があるから。
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わ - いつもみてます! (2019年3月12日 15時) (レス) id: c232dbe5e9 (このIDを非表示/違反報告)
麗 - 作者様、好きです。すこですすこ。 (2019年2月17日 10時) (レス) id: 8656a872ff (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しぃも | 作成日時:2019年2月17日 3時