人 質 【2】

Ep.８４ ページ37

.





一瞬で、地獄絵図へと化した。



泣き叫びながら逃げ惑う。





『･･･せんせ、なんで銃なんか持ってんの･･･！』




同じ列の花恋や沙良が泣きながら私にしがみついてくる。


なぜか、冷静でいられる私は、大丈夫だよと2人の背中をさすって。




「───言ったはずですよ！
間違えたら、5人の命が犠牲になるって」




嫌だ、お願い、助けて。


皆、泣き叫ぶ。




「今から呼ぶ5人は！隣の美術室に来い！！
それ以外の者は教室から出るな。出たら命の保証はない！」




花恋も沙良も、ガタガタと震えて泣きじゃくる。

大丈夫大丈夫、と背中をさすってあげることしかできない。


大丈夫かどうかもわかんない。

だって誰がその5人に選ばれるかわからないから。




「───待ってくれ！！」




里見くんが、声を上げた。




「･･･5人のうち1人は俺でいい･･･！
これが正しいことだなんて思ってねぇ。
でも、これは俺がまいた種だ･･･！
俺は、ここにいる誰よりも責任を取らなきゃいけねぇ、償わなきゃいけねぇ！！」

「･･･里見、」

「いいだろう。
･･･残るは4人だ」




また、泣き叫ぶ声が響く。




『ッせんせ･･･！！』




たまらなくなって、先生の目の前に駆け寄った。




「･･･なんだ」

『私でいい。私でいいから、もうやめて･･･！』




甘い考えだってのはわかってる。


わかってるけど、もうこんなの耐えられない。




「駄目だ。お前は、殺さない」

『ねぇなんで･･･？
澪奈が自 殺したのは、私のせいだよ･･･！
私はあの子を守ってあげられなかった、なんにもしてあげられなかった･･･！！』

「お前のせいじゃない。何度言えばわかる？」




お願い、もうやめて。




「瀬尾雄大！！」


「堀部瑠奈！！」


「西崎颯真！！」


「結城美咲！！」



『ねぇ一颯先生！！！』




何度私が叫ぼうと、先生は止まってくれない。



瑠奈は開かないドアを必死にガタガタと揺らし、美咲は泣き崩れて過呼吸にまでなりかけてる。




《 柊、馬鹿な真似はやめろ！！
お前のやってることは矛盾してる･･･！ 》

「矛盾？なにがですか？」

《 お前はただ、殺された景山澪奈の復讐がしたいだけだ！！
それこそ負の感情以外の何物でもない！！ 》

「それはまだ刑事さんに全貌が見えてないからですよ。
いつか、生徒達は分かってくれるはずです」

《 ふざけるな！！ 》




電話越しに、郡司行くな！と止める声が聞こえた。



.

Ep.８５→←Ep.８３

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す