人 質

Ep.３９ ページ40

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水着を切り裂かれたことも。


部屋の窓を割られたことも。



澪奈は私に、なにも言わなかった。



“大丈夫だから”

“タイム伸びなくて落ちてるだけ”



私が心配しても、澪奈はそう言ってた。

水泳のことなんてわからないから、私はそれを鵜呑みにして。




『･･･怖かったよね、』




ごめんね、こんな馬鹿で。


もっとちゃんと、澪奈に寄り添ってあげてれば。

もっとはやく、澪奈の変化に気付いてあげれてれば。




「───ねぇ、それ誰からもらったの？」




香帆が、さくらに詰め寄った。


さくらの手には、てんとう虫の刺繍が入った水色のハンカチ。




(───あれ、)




私と一緒に、買いに行ったやつ。


“さくらにプレゼントするやつ一緒に選んで” って、半ば無理矢理買い物に付き合わされたことを思い出した。

結局私がチョイスしたもの全部却下したクセに、あのハンカチを見つけた瞬間すぐに決めて。




──────




「このキャラクター、私の大事な友達が好きなキャラクターなんだよね」

『さくらじゃなくて、？』

「別の子の。
もちろんAも大事な友達だよ」

『知ってる』

「言うと思った」




──────





Aも何か買おう、と澪奈が買ってくれたのは、そのキャラクターのデザインのマグカップ。
澪奈も同じキャラの別柄のを買って、お揃いにしてくれた。

割れるのを恐れて使えなくて、結局今は澪奈と一緒に撮った写真と共に置いてある。




「･･･澪奈から、」




さくらがそう言うと、香帆は教室を飛び出して行った。




(───やっぱり･･･)




澪奈が言ってた、“大事な友達” って、香帆のことだったんだ。


確かに、香帆と澪奈は仲が良かった。

けど、なぜか急に話さなくなって。



でも、澪奈はよく香帆の話をしてた。


さくらと香帆にも、仲良くなってほしいだとか。
もらったピンクのハンカチを突き返してしまったことも後悔してたし。


澪奈は、香帆のことが大好きだった。




『･･･香帆、』




待って、と香帆を追いかけた私に、さくらも同じようについてきた。






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