気付かない男、今井です。【III】

Ep.１１０ ページ16

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･･･いろんな生徒の、“なんだあいつの髪” という視線が絡みついてくる。
別にもういいや。
切っちゃったものは戻らないし、後悔もない。




「A！？」




突然、後ろから声をかけられて。




「何よその髪！！
まさかあいつにやられたの！？」




とっても怒った様子の理子ちゃん。と、その横には、坊主にされた2年の先輩。女の子なのに。




『･･･それ、』

「剛田にやられたの！！
Aもなの！？」

『私は違うよ。
･･･ありえない、本当にありえない』




ふつふつと湧き上がる怒り。




「とにかく、三ちゃんと伊藤ちゃん探そ！！
これは酷すぎるわ！！」

『･･･うん、』




校内中を探し回り、三橋さんと伊藤さんが生物室にいたのを見つけて。




「三ちゃん伊藤ちゃん！コレ見てよ･･･！！」

「ちょっとショートにしてやるよって言われて･･･、」

「ショート過ぎんだろ、出家すんの？」

「しません･･･ッ」




本当にありえない。

剛田先生、正気？




「正気かよ･･･、女の髪切るってよォ･･･！！」




バキッ、と音を立ててヤシの実を割った伊藤さん。
･･･あれ、割れるの？




「･･･ってちょっと待て。
Aちゃんもえらい髪の毛短くなってっけど！？」

『あ、いやこれは、』

「･･･ンの野郎、ぶち殺す！！」

『待って待って伊藤さん、違うんです･･･！』




慌てて伊藤さんを止めて、正直に話した。




「やること男前すぎんだろ！！惚れるわ！！」

「ちょっと三ちゃんやめてよ。
Aは私のなんだから！」

『･･･え、そっち？』




理子ちゃん、そっち？




「潔すぎて怖ェよ。
Aちゃん、地毛なんだし綺麗な髪だから染めたりなんかしちゃダメだよ？」

『伊藤さん･･･』

「とにかく、俺らに任せとけ。
絶対ぶっ飛ばしてやっからよ」

『お願いします』




･･･ヤシの実にコショウを詰めてるのは、見なかったことにしよう。




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