気付かない男、今井です。【III】

Ep.１０６ ページ12

side A





『･･･ん、よし』




道場に着いてから、道着に着替えた。
髪も邪魔にならないよう高い位置でひとつにまとめる。

気合を入れるためにぱちん、と頬を叩くと。




「ごめんAッ、坂本先生と剛田先生が来て･･･。
ちょっとだけ遅れる！待っててもらっていい？」

『うん、いいけど･･･』

「佐野！見つけたぞ！！
昨日は逃げやがって･･･！」




だよね、そうなるよね･･･！！


でも、今回は逃げない。
強くなるんだもん。


理子ちゃんの隣に正座して、坂本先生と剛田先生に向かい合う。




「･･･赤坂くん。ここらでひとつ、私の味方につかないか。付き合いたくもないあいつらと、脅されて付き合ってるようなモンなんだろう？
･･･佐野はもうダメだ、開久とも繋がっていることがわかったからな」

「そんなことありません。
約一名、卑怯で計算高い奴だけど、とっても良い奴らです。それに、Aが開久の生徒と一緒にいたからなんだっていうんですか？
生徒の交友関係にまで口出しするんですか？」




理子ちゃん、カッコいいっす･･･！！




『三橋さんも伊藤さんも佐川さんも、開久の人達も、みんないい人達です』

「良い奴らなワケねェだろ！！」




･･･元ヤクザに言われたくないもん。




「人を見かけで判断しちゃいけませんな。
例えばあなたは、ヤクザみたいな見た目をしているが、実際は教師だ」




ああぁ、それ言っちゃうと･･･。




「一昨日までヤクザでした！」

「おととととととと！？
おとと、おとと･･･ヤクザ？」




ほらぁ、もう･･･。




「おとと おとと、どぅんッ！
おととと おとと ヤクザッ！Hey！！
ッヘェェエイ！！！one more！！」




もう、こうなったら止められない。

理子ちゃんを見習い、完全に無になって理子ちゃんパパのフリータイムを過ごすしかない。





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