気付かない男、今井です。【III】

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「さすがに今回ばかりは俺ァ知らねぇぞ」




せいぜい頑張るこったな、と三橋さんは行ってしまった。


･･･仕方ない。腹を括ろう。


目を瞑って、ゆっくり深呼吸した。




『･･･よっし、』




校門にもたれて立ってる今井さんのところに走る。




『今井さんッ、』

「ッあ、Aちゃん･･･！」




そわそわしてる。

んふふ、なんか可愛いなぁ。




『はい、どうぞ。
お口に合うかどうか、わかりませんけど･･･』




ハート型に型どった、ガトーショコラ。




「･･･ッお、おぉぉお･･･ッ」




今井さんなぜか半泣き。




『･･･ど、どうしたんですか？』

「女の子からバレンタインなんて初めてでよ･･･！
しかもこんなに可愛い恋人からなんて･･･、俺、もう死んでもいい！！」

『･･･ッひゃ、！？』




ぎゅうっと抱き締められ、一気に顔が熱くなった。

今井さん、ここ軟高の校門です！！


ここで盛大に告白されたあの日から、今井さんと私は軟高でちょっと噂になってるらしく。

なんとか今井さんの腕の中から抜け出して、その手を引いて走り出した。




「･･･え、Aちゃん･･･！？」

『すっごい見られてたから･･･！』




恥ずかしくなっちゃって、と素直に伝えた。




「ッ！ 君は本当に、どこまで可愛いんだ！！」

『や、可愛いだなんて･･･、』




きっと、今の私は耳まで真っ赤だろう。

気付けばかなり走ってきていて、もはやどこかよくわからない路地裏。




「･･･げッ、」




突然、今井さんが顔を引き攣らせた。






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