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ベッドに入っても中々寝付けるわけもなくて
思い出すのは今日出くわしてしまった彼との幸せな思い出ばかり。
世間から見たら”幸せな恋人同士“だと思ってた。
彼が既婚者だと知るまでは。
無理矢理仕舞い込んでいた気持ちがまた引っ張り出されてしまって行き場のない感情の波が押し寄せる。
ふとリビングの電気がパチリと消えて
大我も寝たんだな、って頭の片隅でぼんやり考えていたら急に寂しい気持ちになってギュッと目を瞑った。
このまま寝てしまえるだろうか。
そんなことを考えながら暗闇の中を彷徨っていたら
フワリと何かに包み込まれる感触がした。
人間の骨張った感触とか体温とは違くて
なぜだか心が浄化されてくような不思議な感覚。
もう夢の中に落ちたのだろうかと錯覚してしまうほど。
だけどやっぱり意識はハッキリしていて
頭にそっと添えられている掌にハッとした。
｢大我？｣
｢ん？｣
｢何してんの｣
いつの間に私のベッドに侵入したのか大我に後ろから抱き締められていることに気付いた。
｢だって布団届くの二日後だし｣
｢そうじゃなくて｣
｢俺もうソファで寝るのやだって言ったじゃん｣
だからといって抱き締める必要はあるのか？
なんて思ったけど憎まれ口を叩きながらも大我なりに慰めてくれているんだとすぐに分かったからか不思議と嫌悪感はなかった。
｢俺抱き枕ないと寝られないタイプだから｣
｢なにそれ｣
｢だからAは安心して枕役を全うすればいいよ｣
上から目線なそのセリフに普段だったら腹を立てるところだけどなぜだかひどく安心して目頭が熱くなった。
再び目を閉じると温かいものが目尻を伝う感触がした。
私の震えている肩をそっとさすってくれたりポンポンと頭を撫でてくれたりと大我にしては気の利いたことをしてくれるなぁなんていらんことを考えて少しだけ感心してしまう。
｢ねぇA、この際もう全部吐き出したら？｣
｢え、｣
｢溜め込んでるもの全部言葉にして、口に出して体の外に出す！｣
｢ふっ｣
｢いや笑い事じゃないのよ！デトックスだから！｣
｢なんなのそれ｣
大我の口からデトックスという単語が飛び出したことがなぜだか面白くて更に声に出して笑ってしまった。
｢で？言いたいことは？｣
ひとしきり笑い終えて一息ついた頃に大我の穏やかな声が背後から聞こえてきた。
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続く
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作者名：ぽむ | 作成日時：2021年7月25日 12時
