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｢まだ10年くらいしか使ってないよ｣
｢え、10年もやってんの？｣
どうやら捉え方は人それぞれらしい。
すごいねーと言いながらお寿司を口に運ぶ大我。
うまっと嬉しそうな顔をして味噌汁をすする。
そんな天真爛漫な大我を見てるとなんだか近所の子供を預かっているような気分になる。
｢てかあの同期の子、いいじゃん｣
からの急な方向転換に味噌汁を吹き出しそうになった。
不覚にも忘れかけてた温かい気持ちを少しだけ取り戻していたところになんてことを言い出すんだこの男は。
｢は？｣
｢今日一緒にいた樹くん？いいじゃん｣
いいじゃん、とは？
｢どういう意味｣
｢え、樹くんとはどうなのって｣
そう言って大我はニヤニヤ顔を発動させた。
ちょっと待て、そもそもこのことについて説教するつもりだったんだ私は。
｢どうって、ただの同期だけど｣
｢えー彼氏候補じゃないんだ｣
｢そんなわけないでしょ｣
｢ちょっと悪そうな見た目なのに仕事は出来てさ、イケメンで気遣いも出来るしノリもいい、彼氏にするにはめちゃくちゃ有能じゃん彼｣
まぁ言ってることは正しい。
でもだからこそなんだよなー。
そんな女の子が放っておかない陽なタイプの人なんてこんな陰でしかない私が付き合えるわけなかろう。
｢てかあんた私以外に見えないの？｣
｢うわ、はぐらかした｣
｢うるさい、んでどうなの？｣
今更？って笑った大我は当たり前じゃん、と得意げな顔をする。
なにが当たり前なのか全然分からないけども。
｢いや、怖いんだけど｣
｢なんでよ｣
だってそんなの、
｢まじの幽霊じゃん｣
｢待って幽霊じゃないから！｣
｢完全に幽霊でしょ｣
｢違う！俺は妖精！｣
初めて会ったときから思ってたけどなんの根拠があって妖精だと言い張るんだろう。
｢証拠は？｣
そんな小学生みたいな問い詰めをする私に
んー、と大我は少し視線を上に向けて｢神からのお告げ？｣と真剣に言い放った。
ダメだ、頭痛い。
｢もう幽霊でも妖精でもなんでもいいや｣
｢なにそれ、ひどくない？｣
なんてぷんすかしてる大我はやっぱり5歳児で。
こんな堂々巡りの会話をしていても大我がここに棲みついている事実は変わらないのよね。
なんならこの世界に生きている人間と何一つ変わらないのに
これが私にしか見えないんだから世の中不思議なこともあるもんだ。
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作者名：ぽむ | 作成日時：2021年7月25日 12時
