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もう観念、するしかないのだろうか。
だって昨日この家に帰ってくるまでこの男の姿は家でも会社でも見ていない。
でも私が会社で孤立してるのも事実だ。もちろん後者も。
｢あの、百歩譲ってあなたが妖精だっていうことを仮定したうえで聞くけどなんで私の元に来たの？｣
｢あなたじゃない、大我｣
そう訂正して大我さんはコーヒー、いや最早カフェオレをグッと流し込んだ。
｢大我、さんは｣
｢大我でいいよ｣
いやそんなことは正直どうでもいい。
妖精がうちに来たことがそもそも疑問だけど
それに加えて“恋の”妖精がなぜ私の元に？
その経緯を詳しく教えてほしい。
恋なんて今の私には無縁なのに。
｢なんでここにいるのかは、今のAに俺が必要だったから｣
｢はい？｣
｢きっとAの涙がトリガーだったんだと思う｣
私の、涙？
｢また意味分かんない、って顔してんね｣
｢…うん｣
｢俺さ、自分の実態があるって気付いたのが最近なの、それまでは意識もボヤボヤしてて自分でも自分が何者だか分からない状態だった｣
｢そう、なんだ｣
私には全く分からない感覚だ。
そもそも本当に妖精なの？
大我が勝手にそう思ってるだけでただの幽霊なんじゃないの。
｢それまでずっと真っ白な光の中を彷徨ってた、それが突然意識がハッキリしたと思ったらここにいたって感じ｣
そう言って大我は両手を眺めながら開いたり閉じたりを繰り返す。
まるで自分の存在を確かめるように。
｢ここにいたのはさっきも言ったように三日前くらいで、でもAが俺の事見えたのは昨日が初めて｣
｢うん、全然気付かなかった｣
｢いや、自分でも全然実感がなくてさ、自分がこの形を成すまで意識はあったけど動けなかったのよ。やっと動けるようになったのが昨日の朝。そしたら不思議とずっと昔からこの世界にいたみたいに全て思い出した。自分が誰なのかは分かんないけど｣
｢だから私にも見える様になったってこと？｣
｢そう、AがSOS出したからね｣
そんなの自分では出したつもりもなかったけど。
そうなのかもしれない、とか思ってしまうから不思議だ。
それから大我は
｢誰かの恋を叶えること、それがここに俺が現れた条件｣
そう言って綺麗に微笑んだ。
｢そんでそれを拗らせてるAが俺を引き寄せたってこと｣
なんだ、それ。恋なんてしてないけど。
にわかには信じがたいけど受け入れるしか、なさそう？
誠に不本意ながら
妖精男との同居生活、始まりそうです。
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作者名：ぽむ | 作成日時：2021年7月25日 12時
