戦国夢物語【短編集】 (ページ11)

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▽赤色の簪(真田幸村) ページ11

「あ、あの……」

「幸村さん、どうかしました？」

廊下を歩いていると、私を呼び止める声が聞こえて振り返った。
声の主は真田軍総大将、真田幸村さんだ。

頬を赤くして、視線を下へ落としている。

「ちょっとだけ、時間を貰っていいかな？」

待って、これってまさか……

告白？！だとしたらすごいことだ。
生まれてこのかた、告白されたことの無かった私。

だから、告白される人が羨ましくて、密かに憧れていた。

「どうぞどうぞ！」

テンションが急激に上がった。

すぐ近くにあった幸村さんの部屋に入らせてもらう。
部屋でゆっくり話したいそうで。
私と幸村さんは向かい合って座った。

「えーっと……あの、その……」

私と床を交互に見て、ボソボソと何かを言おうとしている。
可愛いなと思った。
幸村さんについている耳と尻尾が横にふりふりと動いているし。

「これ、受け取ってくれるかな……？」

「……何ですか、これ」

「見れば分かるよ」

手渡された小包。重みがある。
私は幸村さんを見つめた。
彼が微笑むのを見てから、小包を開けた。

「……これって」

「うん、君に似合うと思って」

小包の中には赤色の簪があった。
高かっただろうに。

「私が貰って、いいんですか」

「俺が贈りたいって思って買ったんだから」

「…ありがとうございます。大切にしますから」

嬉しくて、簪を持って胸に手を当てた。
幸村さんから貰った、とっても大切な……。

「君は違う世界から来て、いつ帰ってしまうか分からない。
それならば、俺が君といた証を残していたくて。
向こうの世界でも、俺を…俺たち、真田軍を思い出してほしい」

幸村さんはそう言うと、寂しそうに微笑んだ。
きゅっと胸が締め付けられる。

元の世界に帰りたくないな、そう思ってしまう。

「…忘れるわけ、ないじゃないですか」

馬鹿。

小さく呟いて、幸村さんの胸に体を預けた。
いつか、私は元の世界に帰ってしまう。
幸村さんや、真田軍の皆とお別れの日が来てしまう。

だけど、真田軍の皆を忘れることはないだろう。

身元も分からない私に優しくしてくれた。
大切にしてくれた。
一人で不安だった私を、元気付けてくれた。

そんな皆が、私もまた大好きで。

最後まで、笑って過ごしたい。
それが私の願い。

───
連載中の小説で書こうと思ってたけど、ストーリがごちゃごちゃになるのでやめました。