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部屋に戻ろうとすると「あの」と後ろから呼び止められた。
振り返ると、そこには今日入ったあのメイドがいた。
「すみません、呼び止めて」
「別にええ。なんや」
「トイレはどこでしょうか。広くて迷ってしまって…」
メイドの手には、モップが握り締められている。
「こっちや」
メイドをトイレまで案内した。ありがとうございますと深くお辞儀をされた。
________
部屋に戻り、椅子に腰をかけた。
壁に掛かっているカレンダーを見た。
ずっと明日のことばかり考えていた。
ずっと、朝から、そして今も。
明日は、両親の命日だ。
両親が撃たれたあの憎くて堪らない日。
あれから15年が経つ。いまだに犯人は見つかっていない。
俺は一番下の引き出しを開けた。
『なんかあったら引き出しにある手紙の中身を見て』
母の言葉が脳内で再生された。その手紙を手に取ろうとした瞬間、手が信じられないほど小刻みに震えた。
手の震えは一向に止まらない。
「なんで…なんでや…」
ずっとだった。何度もこの手紙に触れようとした。だが、いざとなると震えが止まらない。
それが今も続いて、まだ手紙の中を見れていない。
この手紙を見るのが怖かった。母が残したこの手紙には何が書かれているのか。
あの時の真相が書かれているかもしれない。でも知ってしまったら、
怖くなり、引き出しを閉めた。
知りたいのに。事件の真相を知りたいのに。
知りたくない自分もいる。
明日、絶対に手紙を開けてやる。
手紙を開けて、母が何を残したのか、両親に何があったのか全て知る。
明日になればきっと、震えだって止まるはずだ。
机に突っ伏せ、手の震えが止むまで待った。
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みー&りー - 更新待ってます! (2021年7月27日 21時) (レス) id: a16eac8d1e (このIDを非表示/違反報告)
ひまり - 今2周目読み終わりました!先が気になりすぎます!!忙しいと思いますが更新楽しみにしています!!頑張ってください!応援してます! (2021年6月30日 11時) (レス) id: c53fc1f622 (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - さしみさん» この作品を読んでくださりありがとうございます!これから少しずつ更新していくので読んでいただけると嬉しいです! (2020年9月27日 10時) (レス) id: be4e5c9e55 (このIDを非表示/違反報告)
さしみ(プロフ) - 久しぶりの更新ありがとうございます!お忙しいとは思いますがこれからも頑張ってください!楽しみにしています。 (2020年9月26日 21時) (レス) id: bf88c3a608 (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - りんさん» コメントありがとうございます〜!精一杯頑張って更新します!! (2020年3月1日 21時) (レス) id: be4e5c9e55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:よる | 作成日時:2020年2月20日 20時