십. 元旦那 ページ10
もう少しで家だと言うのにどうしてこんな場所で待ち伏せしているんだろうか。そもそも旦那と離婚してから引っ越した場所は教えてない。
「見つけるまで時間かかっちまったけどまた会えて嬉しいよ」
「………要件はなに?」
「おいおいつれねーな。せっかく再会したのによ。…まぁいいや、金貸してくれよ」
怒りで頭が狂いそうだ。私たちはすでに他人なのにどうしてお前みたいなクソ野郎にお金を貸さなきゃいけないの?
そのお金が戻ってこないことぐらい痛いほど知っている。私は拳を握り締め、必死に怒りを抑えた。
「すぐに返すから昔のよしみで頼むよA、な?」
「嫌よ、あんたに貸すお金なんて一銭もない。はやく私の目の前から消えて」
「…チッ、こっちが下手に出れば調子に乗りやがって。体に教えなきゃ分かんねーか?」
身体が震え出す。覚えているのだ、この男に何度も叩かれたり、殴られたり、蹴られたりした恐怖を。機嫌が悪いときは本当に酷い仕打ちを受けた。
「警察呼ぶから!!!」
「!、ッ余計なことするんじゃねーよ!!」
鈍い音がした。気が付けば私は倒れていた。口内が鉄の味がする。じんじんと頬に熱さと痛みが増す。
私、いま殴られた…?
「黙って貸せばいいのによ、余計な手間取らせんな」
じわりと涙が滲む。私はいつまで経っても惨めだ。良い雰囲気だと思っていた彼には現実を見せつけられ、元旦那からには殴られた上にお金をせがまれる始末だ。
一体私が何をしたって言うのだ。私はただ、普通に暮らしていければ幸せだったのに。
それなのにミョンホくんに身の程知らずな感情を抱き、それ以上を求めてしまったから神様からお叱りを受けてしまったのかな。それなら仕方ないかな。
「ほら、早く立てよ。家この辺なんだろ?はやく案内しろよ」
さっさとこのクソ野郎にお金を渡せば楽になるのかな。立ち上がりたいのに身体が思うように動かない。もう何も考えたくない。
「………
腹の奥底から唸るような低い声が聞こえてきた。聞き慣れた母国語ではない。それは紛れもなく中国語だった。
「もう警察には連絡済みです。傷害罪の容疑で大人しく逮捕されてください」
淡々と説明する声が頭上から聞こえる。目線だけを動かせば、ぼんやりと見慣れた輪郭を捉えた。
「…っミョン、ホ…くん」
痛みに耐えながらその名前を呼ぶと彼が着ていた上着を上半身にかけてくれた。ふわりと香るミョンホくんの匂いに安心して再び涙が溢れ出した。
341人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
矢崎(プロフ) - ムルーアさん» ムルーア様、初めまして。コメントありがとうございます〜!!!甘め要素控えめですが、キュンキュンして頂けて良かったです(笑)Xのフォローもありがとうございます😊お話はまだ続きますので、引き続きお楽しみ下さい ❤︎ (3月30日 9時) (レス) @page15 id: 4e6327207d (このIDを非表示/違反報告)
ムルーア(プロフ) - 初めまして!めっちゃキュンキュンしました🥹🥹🥹Xもフォローさせて頂きました!素敵な作品ありがとうございます💕 (3月30日 9時) (レス) @page13 id: e97b81299d (このIDを非表示/違反報告)
矢崎(プロフ) - さくさくさん» さくさく様、ご愛読・コメントありがとうございます!!もしかしてX(旧Twitter)のアカウントでしょうか? @1__monmon__1 こちらをコピーしてもダメでしたか😭? URLで貼れるようにやってみます! (3月18日 21時) (レス) id: 54a4d2b70e (このIDを非表示/違反報告)
さくさく - 矢崎様、主人公視点でのお話完結おめでとうございます!!裏話楽しみにしています😊失礼ながらお聞きしたいのですが、アカウントを検索してみても矢崎様のアカウントらしきものが一つもなく、、、よろしければアカウントのURLを教えてもらえないでしょうか? (3月18日 19時) (レス) @page13 id: 8125d01b3c (このIDを非表示/違反報告)
矢崎(プロフ) - さくさくさん» さくさく様、コメントありがとうございます ❤︎ ランキングも有難いです😌ようやくハオちゃんを書き始めました〜!ずっと書きたい願望はあったので無事にお披露目できて嬉しいです!!さくさく様、我爱你✨💞✨ (2月25日 23時) (レス) id: 4e6327207d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:矢崎 | 作成日時:2024年2月25日 8時