「我爱你」って言わせてよ

삼. 帰り道 ページ3

「Aヌナの家はどちらですか？」
「この通りを真っ直ぐ行って、突き当たりを曲がった先だよ」

了解です、とスマートに車道側を歩き出すミョンホくんにいちいちときめいてしまう。

お店から一歩外に出るだけでがらりと雰囲気が変わる。いつも店内でしか会話を交わさない為、頭の中で話題をかき集める。

「ヌナはあのお店で働いて何年目になるんですか？」
「えっと、結婚した頃に始めたからもう5年目かな」
「もう5年目になるんですね」
「ま、まぁね。あっという間だよ。あはは…」

せっかくミョンホくんから自然に話題を出してくれたのに会話のラリーが続かない。緊張し過ぎて何を話せばいいのか分からない。

ミョンホくん達は私がバツイチなことを知っている。
だからそういう話を私に振らないことも知っている。

もう私はとっくに元旦那のことや離婚のことなど吹っ切れているのに変に気を遣われると尚更惨めになる。

「ヌナは今後やりたいこととかありますか？」
「やりたいこと？…うーん、そうだなぁ。目的は決めずに、気ままにお出かけしたいかな」

結婚してたときは自由な生活なんてほぼ皆無だった。家事にパートに、だらしない元旦那のお世話。自分に使う時間なんてなかった。

「ふふ、いいですね。今度一緒にお出かけしませんか？」
「………え？い、一緒に？」

それってつまりデートのお誘い…？など見当違いな思い込みをしながら突き当たりに差し掛かったとき、カーブミラーに映る私たちがふと視界に飛び込んできた。

皺一つないスーツを着こなす彼の隣には、履き潰したデニムパンツと無地のTシャツを着たおばさんが居た。

…待って、私ってこんな顔してるの？

帰る前に化粧直しをしたはずなのに顔が疲れ切っていつも以上に老け込んで見えた。

「………ありがとうミョンホくん。ここまでで大丈夫だよ」
「え？でも家はまだ先じゃあ…」
「本当に大丈夫！！！送ってくれてありがとう！！！」

急に恥ずかしくなった私は彼の制止を振り切り、久々に全力疾走で夜道を駆け抜けた。

足はもつれそうになるしすぐに息があがる。走れば走るほど悲しいことに年齢を感じた。

けれどそれよりももっと悲しいことはミョンホくんが私を追って来なかったこと。

少しだけ淡い期待を抱いてしまったが所詮私はこの程度の女なのだ。勝手に期待して勝手に傷付いて、いい歳して何してるんだろう。

きっと明日は筋肉痛になっているだろうな。
今の胸の痛みより軽ければいいけど、なんてね。

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