「だって彼は雲の上の存在」 ページ2
会場のボルテージは最高潮だ。鳴り止まない歓声に一生懸命応えるアイドルはいつ見ても輝いていて眩しくて胸が熱くなる。
「………チャニ」
彼を呼んでも誰にも気付かれず歓声に飲み込まれる。
もう私はただの一般人で、彼は世界的人気なアイドル。
あの頃のように隣には居れない。そんなことは嫌と言うほど分かっている。アイドルを諦めて逃げ出した私が望んではいけない。
ステージ上で歌って踊るチャニは本当に輝いている。
私はもう二度とあの夢の場所に立てない。こうして観客席から声援を送ることしか出来ない。でもそれでいい。こうしてみんなの活躍を見れるだけで満足だと自分に言い聞かせる。
「残念だな、Aが男の子なら僕のチームに誘ってたのに」
「またその話?チャニも飽きずに言うよね」
瞼を閉じれば昔のふたりがそこにはいた。
私が男の子だったらチームに入ってほしいと冗談混じりによく言われていた。
当時は受け流していたけど、もし私が男の子だったら違う未来があったのかな。Stray Kidsのメンバーとして目の前の舞台に上がっていたのだろうか。
そんなたらればなことばかり考えてしまう。
私はあの頃から時間が止まったままだ。年齢だけ重ねて無駄に大人になってしまった。ずっと後悔している。逃げ出したくせにね。
パク・ジニョンPDニムの言葉が呪いのように私の記憶に深く刻まれている。
あのオーディションで脱落した子達の中にはグループやソロでデビューを果たした子が何人もいる。
私にもきっとチャンスがあったはず。
そのチャンスを棒に振り、楽な逃げ道に進んだのは紛れもなく自分自身だ。
「僕がAの第一号のファンになってあげるよ」
「……絶対馬鹿にしてるでしょ?」
くしゃりと笑うと目尻の皺が深くなる彼の笑顔が大好きだった。実年齢より幼く見えるその笑顔は昔も今も変わっていない。
そっと瞼を開ければ眩しい光に包まれる。
「STAY〜!今日は本当にありがとう〜!」
あの頃よりも遥かに上手くなった日本語はきっと彼の努力の賜物だ。一緒に韓国語を勉強しながらお互いに日本語や英語を教え合った日々が昨日のことのように思い出す。
ねえ、チャニ。もうあなたと同じ景色を見ることは出来ないけれど、アイドルとして生きるあなたを陰から応援し続けてもいいかな。
「大好きだよ、チャニ」
届かなくていい。この想いは私だけのものだから。
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矢崎(プロフ) - さくさくさん» さくさく様、最後まで読んでいただきありがとうございます ❤︎ 題名の仕掛けにも気付いてくださり流石です〜!!完結作品が一つ出来てホッとしています(笑)今後の作品も是非見守っていて下さると幸いです😌🩶 (1月26日 15時) (レス) id: 28d438705b (このIDを非表示/違反報告)
さくさく - 完結おめでとうございます!!題名に仕掛けがあること あれ?もしかして? と気になってうずうずしていたので やっぱり〜!! なんて1人で盛り上がっていました笑 毎話毎話楽しみにしていたので完結してとっても嬉しいです😊本当におめでとうございます🤗 (1月26日 0時) (レス) @page11 id: 8125d01b3c (このIDを非表示/違反報告)
矢崎(プロフ) - アイさん» アイ様の記憶に私の書いた🐺が少しでも残ってくだされば嬉しい限りです。本当に最後までお付き合いいただきありがとうございました!!!今後も惹かれる作品を書いていけるよう精進します😌🩶 (1月21日 21時) (レス) id: 28d438705b (このIDを非表示/違反報告)
矢崎(プロフ) - アイさん» アイ様、ご愛読・コメントありがとうございます!!!タイトル名をつけるセンスが私には皆無だと思っていましたので、アイ様が読むきっかけになってもらえて光栄です ❤︎ (続きます) (1月21日 21時) (レス) @page13 id: 28d438705b (このIDを非表示/違反報告)
アイ(プロフ) - 毎日更新楽しみにしてたので感激です!タイトルに惹かれて来たのですがもう予想通り最高の作品でした💕最後の最後まで本当に読むのが楽しかったです!😆これから全力で応援させていただきます‼️🥰 (1月21日 21時) (レス) id: ce556c25c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:矢崎 | 作成日時:2023年12月21日 23時