嫌いな君に口づけを…

嫌い 20 ページ22

透「…っ！…真崎…」

A「…は、蓮見君…」

その場に立ち尽くし、呆然としていたからか蓮見君が職員室から出て来て私に話し掛けるまで彼に気づかなかった。

透「…聞いてた?今の話…」

蓮見君は苦笑いを浮かべて、私が落としたノートを拾いながら聞いてくる…

ちゃんと彼と話すのは1週間振りだ、私は慌てて落としたノートを拾い集めると、彼の質問に小さく頷く。

透「…そうか、最後まで言わずに黙っておくつもりだったんだけどな…」

A「……っ…」

上手く言葉が出てこない…『どうして転校するの?』とか、『行かないで』とか言いたい事があるのに…声が出ない…

けれど、蓮見君は私が言いたい事が分かったのか…私の頭に手を伸ばすと優しく撫でて口を開く。

透「……クラスの奴等には転校の事、内緒にしてくれよな…俺、湿っぽいの嫌いだからさ」

蓮見君はそれだけを言って、私にノートを渡しすと其の場を走り去って行く…。

言わなきゃいけない事があるのに、彼を追いかけなきゃいけないのに…私は声が出なく、足が全く動かなかった

A「…っ…蓮見君…」

まだ、私は貴方に何も伝えられていない…『酷い言葉を言ってごめんなさい』とか、『優しくしてくれてありがとう』とか…貴方の事が…『好き』って事とか…。

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