私の知らない彼 ページ33
『…』
「コイツ本当に色気ねぇな」
『…』
「キャミソールのせいだろ」
私の制服のボタンが飛び散り、これから起きるであろう事にビクビクしていた5分前の自分を宥めてあげたい。
目の前の不良達は一応胸元がはだけてる私を見て「だっせぇキャミだな」なんて訳の分からない悪口を言って来やがったんだからね。
確かに今日のキャミは真ん中によく分からない目がラリってるクマのイラストが描いてはあれど、そんな床に這いつくばってヒィヒィ笑わなくてもよくないか？
「よし、お前の名前今日からクマな」
「クマキャミでいいじゃんクマキャミで」
「確かに！クマキャミいいな！」
『何もよくねぇよ』
先程まで冷えきっていた空気が何故か今は和気あいあいとしている。
しかも私は今日からクマキャミなんて最低なあだ名が付けられるらしい。
「拉致っといて言うのもなんだけどさ、お前俺らのこと怖くねぇの？」
『怖いに決まってるだろ！て言うか寒いからなんか着せろ！』
胸元にかけられたブランケット。
先程まで意地悪く笑ってた彼らは何故か嬉しそうに笑っていて、それが妙に切なかった。
『なんでハニのこと狙ってるの？』
「復讐だよ」
『何の？』
「俺らの仲間が1人、あいつにボコボコにされて今も意識が戻ってない」
ヒュっと喉が鳴った。
先程までの威勢とは裏腹に、皆が泣きそうに俯いていた。
さっきのは虚勢だったんだろうか、リーダー格の1人は眉を下げながら
「ごめんな、巻き込んで。でも俺らも許せねぇんだよ」
その顔があまりにも苦しくて訳もわからず涙が出てしまう。
「なんでお前が泣くんだよ…」
解かれた腕の拘束。
今思えば傷つけないように少し緩めに縛られていたのかもしれない。
分かりにくい彼らの優しさがいじらしくて仕方ない。
『ハニが来たら話し合おうよ。こんなやり方じゃなくて』
「でもアイツどうせ聞く耳を持たねぇだろ」
『私が持たせる。だから話し合おう、じゃないとこんなの君達が辛すぎるだけでしょ』
「ありが…」
彼が紡ごうとした「ありがとう」は言葉にならずに消えた。
私の目の前から消えた。
『…ハニ…』
目の前から消えた彼は白目をむいて倒れ込んでいた。
ハニの手には彼のと思われる血が付いていて、何とも言えない空気がその場を包む。
JH「遅くなってごめんね、A」
そう言ったハニの目には、私なんて写ってなかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1962人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
すい(プロフ) - ワバー手練でさん» お返事遅くなってしまいましたごめんなさい！そう言っていただけて嬉しいです(泣)ありがとうございます(；；) (2022年10月11日 14時) (
レス) id: 153a5cc26b (このIDを非表示/違反報告)
ワバー手練で(プロフ) - 読み入っちゃって一気に読んじゃいました＞ ̫＜ 本当に面白いですㅠ-ㅠ (2022年8月19日 22時) (レス) @page39 id: 39c16bc362 (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - apricot384さん» お待たせ致しました(泣)待っていてくださりありがとうございます！またよろしくお願いします！(^^) (2022年5月20日 18時) (レス) @page30 id: 52a215b46f (このIDを非表示/違反報告)
apricot384(プロフ) - 再開ありがとうございます！おかえりなさい꙳★*ﾟ楽しんで読ましていただきます。無理せずでいいので更新よろしくお願いします！ (2022年5月10日 22時) (レス) id: 5c0405314d (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - apricot384さん» コメントありがとうございます！そんなに楽しみにしてくださってありがとうございます(^^)♡励みになります！頑張ります！ (2022年2月26日 0時) (レス) id: 52a215b46f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：すい
| 作者ホームページ：http://twitter.com/sui_no_heya
作成日時：2021年9月10日 22時
