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「本当に1人で大丈夫?」
『うん。落ち着いたから大丈夫、ハニこそ明るい内に帰って。私は大丈夫だから』
幸い切られた髪は内側だったので、よく見たら不揃いだけどパッと見だと分かりにくい。
ハニに背中を撫でてもらっていた事で、少しは落ち着いた。大丈夫。鍵もあるし、今日は両親も帰って来ると言っていた。
「…何があったかは聞かない方がいい?」
『え?』
「Aが話したくないなら無理には聞かない。でも…お前が俺の目の前から消えるなら話は別だよ。Aがずっと俺のそばに居るって言ったんだから、約束したんだから、離れようとしてるならその原因は俺が消す」
頬を包む手はいつもの様に優しいのに、いつもより冷たかった。少しでも発言を間違えてしまえば、そのままこの手が首に伸びてしまう。そう感じてしまう程に威圧的な雰囲気に、私はただただ固唾を飲むことしか出来なかった。
『離れようとなんか…』
「もしもの話。そんなに怯えないで、A」
ニッコリと笑顔を見せる彼は、先程までの雰囲気なんて嘘のように私を優しく包み込む。
でも知っている。この笑顔はただ貼り付けただけの嘘の顔。そこにどんな真意があるのかは分からない。ハニが今何を考えていて、私をこの先どうするのかも分からない。
私は舵取りを間違えてしまったのかもしれない。目の前の薄い体にしがみついてみても、溢れるのは愛情じゃなくて不安だった。
この恋に正解があるなら誰か教えて欲しい。
目の前の天使はどんどん羽を削いでいく。純白だった姿に黒が滲んでいくのを、私はただ見守ることしか出来ないのか。そもそも黒に滲む原因は私なんじゃないか。
こんな事をしたかったんじゃない。私はただ目の前のこの人と幸せになりたいだけなんだ。それだけなのに…
「ねぇA」
真上から降る私の名前を呼ぶ愛おしい声にそっと顔を上げると、また貼り付けた笑顔で天使は言った。
「俺以外を選んじゃダメだよ」
まるで小さい子に言い聞かせるように、優しくでも確実に圧を掛けて私の逃げ場を遮断する。
怖い
怖い
怖い
明確に脳を過ぎる恐怖の感情に、ピリッと空気が凍った。
でも知ってる、知ってるの私。
『ハニもね』
縛り付けられる事にいつしか安心感を覚えてる自分と、私自身もこの天使の自由を奪っている事にどうしようもない幸福感を感じていることを。
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うい(プロフ) - 更新待ってます、! (4月11日 22時) (レス) id: b4144fdbab (このIDを非表示/違反報告)
犬こそ正義(プロフ) - ↓癒し係〜のお話です! (4月11日 20時) (レス) @page17 id: 3d5654d2e4 (このIDを非表示/違反報告)
犬こそ正義(プロフ) - 作品一気読みしてます!!家政婦の話、続き読みたいのでぜひパスワード教えてください。。😭 (4月11日 20時) (レス) id: 3d5654d2e4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆる(プロフ) - この作品の世界観が私は大好きです!更新お待ちしております! (4月3日 21時) (レス) id: 2f9e5d75fb (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - ソヒさん» コメントありがとうございます^^夢小説というサイト?アプリ?は存じ上げず、この作品も占ツクでしか連載をしておりませんので恐らく違う方だと思います…֊ ̫ ֊՞ ՞ (3月20日 10時) (レス) id: 153a5cc26b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すい | 作者ホームページ:http://twitter.com/sui_no_heya
作成日時:2023年5月2日 16時