動き出す歪み ページ15
シウン「こんにちは。Aさん」
『え…』
あの日のように、ハニと帰っていない雨の日。
あの時から数週間が経ち、警戒も薄れていた。そんなタイミングを見計らってか、また彼女は現れた。
今度は私の家の前に。
シウン「この間はごめんなさい。私ったら取り乱しちゃって」
『いえ…お、気になさらず』
シウン「嬉しかったの。あの子の大切なモノをやっと見つけたから…あの子には見合わないくらい、愛らしくて無垢なタカラモノ」
ゆらり、ゆらりと近づいてくる細身の身体。
私より細いのに、得体の知れない恐怖でまた覆い尽くされて膝が震える。
そんな私を見てクスっと笑うシウンさんは、恐ろしいくらい美しかった。
バシャりと水音を立てて座り込んでしまった私に目線を合わせる彼女はまた嬉しそうだった。
何なんだ、この人は。
何がしたいの。
何が…ハニと…
シウン「貴方、愛されてるのね。ジョンハンに」
『貴方とハニの関係は何なんですか。私に何の用があって…』
シウン「言ったじゃない。私の人生の汚点。過ち。」
傷が薄くなった頬にまた手を添える彼女の手を、今度は負けじと掴むけど、その私の手こそが震えている気がした。
彼女は濡れた私の髪を1束掬うと、そのまま唇を寄せる。
同性ながらに、その全てに色気と美しさを感じて思わず胸が鳴る。
まるで……まるでハニを見てるような気になってしまった。
シウン「傷みの無い綺麗な髪ね。」
『…何してるんですか。いくら同性とは言え、赤の他人にこんな事…』
シウン「綺麗なものが好きなの、私。綺麗なものは全部欲しい。貴方の髪も欲しいわ」
見惚れたような、恍惚な表情で私の髪を見つめる彼女には私の抗議の声なんて聞こえていないようだった。
ハニの変な元カノなのかもしれない。そう思って軽く彼女の行動を流そうとした瞬間、私の視界の端に写るハサミに心臓が止まった気がした。
一瞬の事だった。
まるで普通の事のように、私の横髪がジャキッと軽い音を立てて切られていたのは。
『え…ちょっ……』
シウン「ワタシノモノ」
幼い女の子のように、切り落とされた私の髪1束を抱えて微笑む彼女は悪魔にしか見えなかった。
この人は危ない
渾身の力を振り絞ってドンッと彼女を押して、足をもたつかせながらも家に滑り込む。
外では彼女の可笑しそうな笑い声が聞こえて、鍵を閉めたのに入って来られるんじゃないかと怖くて涙が溢れた。
怖い、怖い。
助けて、ハニ。
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うい(プロフ) - 更新待ってます、! (4月11日 22時) (レス) id: b4144fdbab (このIDを非表示/違反報告)
犬こそ正義(プロフ) - ↓癒し係〜のお話です! (4月11日 20時) (レス) @page17 id: 3d5654d2e4 (このIDを非表示/違反報告)
犬こそ正義(プロフ) - 作品一気読みしてます!!家政婦の話、続き読みたいのでぜひパスワード教えてください。。😭 (4月11日 20時) (レス) id: 3d5654d2e4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆる(プロフ) - この作品の世界観が私は大好きです!更新お待ちしております! (4月3日 21時) (レス) id: 2f9e5d75fb (このIDを非表示/違反報告)
すい(プロフ) - ソヒさん» コメントありがとうございます^^夢小説というサイト?アプリ?は存じ上げず、この作品も占ツクでしか連載をしておりませんので恐らく違う方だと思います…֊ ̫ ֊՞ ՞ (3月20日 10時) (レス) id: 153a5cc26b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:すい | 作者ホームページ:http://twitter.com/sui_no_heya
作成日時:2023年5月2日 16時