家政夫ソクミンさん！

気持ちのいい空気 ページ3

ピンポーン


インターホンの音で目を覚ます。
時刻は午前8時。土曜の朝早くから何の用だ？なんてぼーっとした頭で考えるが、すぐに気づく。

『家政夫さんだ…』


ボロボロの格好だがそんなの気にしちゃいられない。
恐らく家政夫さん、5分くらいインターホンを押し続けている。


『すいません！！！寝てて……』

玄関の扉を開けると、昨日資料で見た優しそうな笑顔があった。


DK「よかったー倒れてるのかと思っちゃいました！17家事代行センターから来ました、イ・ソクミンです！今日からよろしくお願いします！」

『本当にごめんなさい…えっと、パク・Aです。とりあえずどうぞ…』


イ・ソクミンさんを家の中に招き入れ、物をどかして座り場を作る。
片付ければよかった。こんなイケメンに汚部屋を…


罰の悪そうな私を見て、ソクミンさんは自分のスマホの画面を私に見せた。
そこに写っていたのは、私の部屋と同じくらい散らかっている部屋の写真。

『これは…』

DK「お恥ずかしいけど、僕の部屋です。実は僕、人の部屋は片付けられるけど自分の部屋はどうも…」


見せられた写真をもう一度見るが、お世辞にも綺麗とは言えない。
でもここはしっかりと大人の対応を…


『わ、私の部屋よりは随分とお綺麗ですよ！』


今日もにこりと笑って見せると、ソクミンさんは一瞬不思議な顔をした後、またあの素敵な笑顔に戻った。


DK「優しいんですね！パクさん！」



作られた笑顔に本心でない言葉。
私はそうやって人の顔色を窺うくせに嘘が下手だ。
初対面のこの人にも、さっきのは本心じゃないって分かるはずなのに…
優しいなんて言われたのは生まれて初めてだ。それともお世辞をお世辞で返された…？



『優しくなんかないです』


やってしまった…
こんなこと言われたら返答しにくいよね…


『すいません、今のは忘れて…』

DK「優しいですよ！！！だって僕を傷つけないようにそう言ってくれたんですよね？十分優しいですよ〜」



太陽のような笑顔でそんなこと言われてしまったら、お世辞だと分かっていても喜んでしまう。
だめだ、真に受けるな、お世辞なんだから…


『ありがとうございます』

DK「僕こそ、カバーしてくれてありがとうございます！」


やめて、お礼なんて言わないで…



DK「どうかしましたか？」

『いえ、なんでもないです。』



なんでもない、何でもないんだから…

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