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『 っ会社! 』
慌てた私はふいに視界に入った時計を2度見する。
…………この時間、いつもなら会社に着いているはず、
え、ヤバいって!!
『 遅刻とか有り得へんから! 』
ちなみに幼稚園から高校まで皆勤賞やった上に、
会社は1度も休んだことも遅刻したこともないこの私。
こんなしょうもないことで遅刻する訳にはいかん!
いや全然しょうもなくはないけど、結構一大事やけど!!
「 あの、Aさん実は昨日、 」
『 ごめん小瀧くん!!!ちょっと今それどころやない!!はよ行かんと! 』
「 そんなに急がんくても………
あ、今日休みません?俺も一緒に休むんで 」
『 はあ?そんなん論外!私もう出るからまた今度!
あ、ちゃんと学校は行かなあかんよ!じゃあね! 』
ドアを閉める間際に見えたのは何か言いたげに私に向かって手を伸ばしている小瀧くん。
それ所じゃない私は思いっきり扉を閉めてだらしなく表に出ているシャツをズボンにしまいながらワタワタと走った。
ってかここ何処やねん!!!!!私の家じゃないやん!!!
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伸ばした手は虚しくもストンと元の場所に戻って行った。
「 ………やっと、会えたんになぁ、 」
ポツリと呟いた言葉も勿論誰にも拾われることなくただ自分の心に跳ね返ってくるだけだった。
Aさんが去ったこの部屋はまだ彼女の匂いが残っている。
甘すぎない爽やかな柔軟剤の匂い。香水とかじゃない辺りが彼女らしさを主張していた。
…………この匂い、昔から変わらへんな。もっと好きになる。
「 はぁーっ、しんど 」
一か八か。サボらないかと提案してみたがバリキャリのAさんにはそんなの言語道断。
まあAさんに仕事があるなら当然俺にも学校というものがある訳であって、
正直行きたくない。でも別にイジメられてるわけやなくて。
むしろその逆。ぶっちゃけ人気者の方やと思っとる。言い方を変えればめちゃくちゃモテる。
「 また、会えるやんな、 」
そんな淡い期待を胸に、俺もスクバを持って家を出た。
…………Aさんに道教えてへんけどちゃんと行けたかな。
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作者名:むんく 。 | 作成日時:2019年8月15日 15時